新型コロナウイルスの影響で、旅行業界や外食、流通産業の業績が世界規模で悪化しているが、
欧米ではメディア業界も広告費の激減でかつてない苦境に陥り、リストラを加速させている。

7月15日付の米CNNビジネスビジネス(電子版)などによると、
この日、英紙ガーディアンと英BBCが、コロナ禍による業績悪化を理由にリストラを断行すると発表した。

ガーディアン紙は、親会社のガーディアン・メディア・グループが、
コロナ禍によって年間予算が当初予想より2500万ポンド(約33億5600万円)も不足することが分かり、
広告部門110人、編集部門70人の計180人の人員削減に踏み切ると発表した。全従業員の12%にあたるという。

アネット・トーマスCEO(最高経営責任者)とキャサリン・ヴィナー編集長は社員への電子メールで
「思い切った行動を起こさない限り、将来的に事業の継続が不可能な年間損失の発生に直面することになる」と理解を求めた。

一方、英BBCは、年初にニュース部門の約6000人の従業員のうち、450人をレイオフ(一時解雇)すると発表したが、
この日、対象者を70人増やし、520人にすると発表した。

英BBCでは当初、将来に向けた構造改革のため、2022年3月までに8億ポンド(約1000億円)の経費削減に迫られ、
年初に450人の一時解雇を決めたが、コロナ禍の影響によって、それだけでは追い付かなくなった。

こうした苦境は米メディアも同じだ。米の非営利のジャーナリズム研究機関、ポインター研究所(本部・フロリダ州)の調べなどによると、
USAトゥディやデトロイトフリープレスといった全米の地方紙計約100紙を傘下に持つ全米最大の新聞社ガネットは今年3月、
経営幹部の給与の25%削減に加え、年収3万8000ドル(約400万円)以上の従業員に対し、4月、5月、6月にそれぞれ1週間、無給の休暇の取得を求めた。

また、ニューヨーク・タイムズ紙は6月末、広告部門を中心に68人の従業員を一時解雇。
全米で30の地方紙を傘下に持つマクラッチーでは4月、コロナ禍を理由に全従業員の4・4%にあたる115人の社員が一時帰休。うち84人が一時解雇された。

他の地方紙でも一時帰休や一時解雇、給与削減が相次ぐが、米シンガーソングライター、ボブ・ディランが生まれたミネソタ州ダルースの地方紙、
ダルース・ニュース・トリビューン紙は5月、コロナ禍による広告収入の減少の加速化を理由に、7月のはじめから、紙の新聞の発行を水曜日と土曜日の週2回に限定し、
あとは電子版で対応するというコスト削減策を発表した。

テレビも同じだ。NBCユニバーサルは5月末、役員報酬の20%削減を発表。米3大ネットワークのひとつ、CBSニュースも5月、従業員の1割にあたる50人を一時解雇。
直後に親会社の米メディア大手、バイアコムCBSは追加で、CBS全体で計400人の一時解雇を発表した。

ここまで読めば「やっぱり時代はネットなのか」と思えてしまうが、ネットメディアもコロナ禍で大変なことになっている。

米バズフィードは今年3月末、4月から段階的に一般従業員の給与を5%から10%、幹部の給与を14%から25%削減すると発表した。
ジョナ・ペレッティCEO(最高経営責任者)は従業員への声明で「コロナ禍の危機が去るまで、私は給与を受け取らない」と宣言した。

また、ザ・ヴァージやイーターといったニュースサイトや隔週誌ニューヨーク・マガジンを傘下に持つデジタルメディア企業、
米ヴォックス・メディアは7月16日、コロナ禍による広告収入減を理由に、約1200人の社員の6%にあたる72人を一時解雇すると発表した(同日付の米CNNビジネス電子版など)。

欧米のメディア業界で春以降、リストラが加速しているのは、コロナ禍が夏には収束せず、さらに長引くと判断されたからだ。
収束の兆しが見えない限り、リストラはますます加速すると見られる。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200725/mcb2007250845002-n1.htm