ついに海外では「DVDの終焉」が騒がれ始めた。

映画産業大国であるアメリカでは、DVDの落ち込みが加速し、スタジオやホームエンタテインメント産業は頭を抱えている。
DVD購入者離れがアメリカでは深刻で、2018年はDVDとBlu-rayなどフィジカルメディアの売上高は前年比15%も減少した。

2010年代を見れば、DVD売上総額は2011年から2018年で67%も減少している。
さらに2008年から過去10年を遡ると実に86%も落ち込んだ。

2019年も減少傾向は続いた。1月から9月の9カ月間の売上実績は前年比マイナス18.5%とさらに減少し、
フィジカルメディア人気が遠のいている。

かつて映画産業で欠かせない存在だったDVD市場の衰退を受けて、サムスンはアメリカ市場向けに4K Ultra HD Blu-ray対応や
1080p対応のプレーヤーの製造を中止することを明らかにするなど、ハードウェア側も徐々に対応を始めている。

映画スタジオやエンタテインメント企業にとって、最もDVDやBlu-rayのセールスが伸ばせる時期だったはずの年末商戦時期も
かつての勢いは無くなり、販売状況が変化しつつある。

これまでマス向けにプロモーションを行ってきたスタジオは、出来る限りの特典を付ける戦略で、
コアなコレクター向けのプロモーションを優先するスタジオが増えてきているのが現状だ。

DVD市場と反対に、2011年からこれまででNetflixやHuluなど映像ストリーミング市場は1,231%という驚異的な勢いで成長を遂げ、
市場規模も約130億ドル(約1兆4000億円)にまで拡大したという消費メディアの変容が背景にはある。

アメリカでは現在、映像ストリーミング同士の競争が過熱しているが、
映画スタジオやホームエンタテインメント産業はその影響を直接的に受けて、フィジカルメディアに依存してきた事業モデルから、
ストリーミングを中心としたライセンスビジネスや広告ビジネスにシフトしている。

映像ストリーミングでは2019年にApple TV+とDisney+(日本未上陸)が正式ローンチ。
2020年にはHBO MaxとPeacockと大手メディア会社のサービスインが確定しているため、
映画やドラマ、ドキュメンタリー、アニメなど人気コンテンツの配信に加えて、オリジナル・ドラマや映画の製作やライセンス獲得に各社が注力することが予想される。

アメリカではこれまで大手メディア企業同士の合併や買収が相次ぎ、地上波TV局やケーブルテレビのビジネスとデジタル配信サービスが混在しながら競争してきた。
それが最近ではディズニーのように単一企業で複数の映像ストリーミングサービスを運営するような大手企業も生まれている。

大資本を軸にした巨大エンターテイメントの産業構造において、今後は映像ストリーミングビジネスが中心的役割を占めることは疑問の余地もない。

アメリカのエンタメメディア「Variety」では、この「ストリーミング・アポカリプス」状態におけるDVD市場の行く末についてレポートしている。
記事では、2010年代におけるDVDとストリーミングの消費傾向とビジネスモデルの移り変わりが書かれている。

またDVD全体の売上低下は加速し続けているが、4K Ultra DH Blu-rayはニッチながら一定の需要があるという。
DVD市場の低迷は独立系の映画製作者達にとっても大打撃だとする。映画製作の資金源としてDVDの売上が寄与していたからだ。

こうした中、DVD売上の今後の見通しもやはり厳しいものとなっている。

しかし一方では、アナログレコードのようにフィジカルフォーマットの人気が復活した音楽業界のように、
DVDやBlu-rayに対しても所有欲やノスタルジーを喚起するフォーマットとして期待する少数意見もある。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191225-00010008-realsound-ent