キングが表舞台に帰ってくる――。サッカー元日本代表FWでカズこと三浦知良(52)の所属する横浜FCはJ2最終節(24日、ニッパツ)で2―0で愛媛に競り勝ってJ1自動昇格となるリーグ2位を確定させた。カズも34試合ぶりにリーグ戦のピッチに立ち、13年ぶりとなるJ1復帰に貢献した一方、シーズン開幕直後に衝撃の“引退勧告”を受けていたことが判明。悲願のJ1昇格と併せてカズの舞台裏に迫った。

“キング”がチームを13年ぶりの大舞台に導いた。2―0とリードして迎えた後半42分、ベンチスタートのカズは4月7日の福岡戦以来、リーグでは実に34試合ぶりのピッチに立った。自身が持つJリーグ最年長出場記録を52歳8か月26日に更新すると、懸命にボールを追うなど、試合を締めくくるプレーでチームの昇格に貢献した。

 かつて日本の絶対エースと呼ばれたカズもすでに52歳。同世代の選手たちが指導者として活躍する中、ここ数年はケガなどもあり、ピッチ上で好パフォーマンスを披露する機会は少なくなっている。それでも全盛期と変わらぬストイックな姿勢で鍛錬を続けて出番がなくても圧倒的な存在感を放つ。

 そんなカズについて実父の納谷宣雄氏が注目発言。今季が開幕した後に「俺はカズヨシには言ったんだよ。“もう辞めたらどうなんだ”と。ほとんど試合にも絡んでいなかったし、若い選手も出てきたから“お前にグラウンドでチームに貢献できることはない”ってな。選手以外でもサッカー界のためにやれることはあるだろうって」。

 納谷氏によると、カズは45歳を超えたころ、自身のプレーが「みっともなくなったら正直に言ってくれ」と、自らの進退について実父の意見を最優先する考えを伝えたという。ここまで限界への挑戦を続ける息子について「2人の約束だからな」と黙って見守ってきたが、ついに事実上の“引退勧告”を突き付けていたわけだ。

 ただ、納谷氏によると、カズは「まだまだ俺にはプレーでもできることがある。それに若い選手を鼓舞して盛り上げたり、いろいろな経験を伝えるとか。ピッチ外でファンサービスとかやれることはあるから」と返答。現役への強いこだわりとJ1昇格を目指すチームへの貢献を語り、首を縦に振らなかったという。

 実際に今季のカズは試合出場のために厳しい練習を続けながらも悲願のJ1入りに向けて若手選手を鼓舞し、チームのまとめ役としてイレブンとコミュニケーションを深めた。昇格の切り札として今夏に加入した元日本代表10番、MF中村俊輔(41)も、カズの存在がなければ獲得は実現しなかっただろう。

 カズは24日に「この瞬間を信じてずっとやってきた。J1では最初の3か月が勝負」と、早くも来シーズンへの意欲を語った。ここ2年はゴールを記録することはできなかったが「毎日うまくなりたいし、うまくなると思っている」と向上心が消えることはない。

 来季に向けても「クラブとして成長した姿をJ1でアピールしたい」と言葉に力を込めた。その上で元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35=神戸)の「股を抜きたい」と冗談っぽく言う。12月10日にも新シーズンに向けてキャンプに入るキングがサッカー界をさらに盛り上げてくれそうだ。

11/25(月) 16:46 Yahoo!ニュース
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