なぜ英語に苦手意識を持つ日本人が多いのか。脳科学者の茂木健一郎氏は「今のグローバル社会では、英語ができないと話にならない」「日本人は揚げ足取りが多いから場数が踏めない」と言う。


【茂木】「なぜ日本人は英語が苦手なのか」という話につながると思うのですが、原因のひとつは日本人に多い「完璧主義」かもしれないと感じています。

最近、アメリカのテレビ番組などを拝見していますと、いろいろな発音の人が出て来きます。でもネイティブの人は意外とそこは気にしていない。日本人も外国の方が変な日本語をしゃべってもそこは別に気にしないで、「何を言っているのだろう」と一生懸命聞くじゃないですか。相手はどちらかというと「こっちが何を言うか」に興味があるので、「正しい英語をしゃべるかどうか」は二の次というか、期待していないというか。むしろ、日本人同士が「正しい英語をしゃべるかどうか」を気にしすぎている気がするんですよね……。

石原さとみの英語力を「素晴らしい」と言えるか
【三宅】はい。彼女は英語が大好きで、非常に熱心に通っています。

【茂木】やはりそうだったんですね。僕は石原さとみさんの英語は素晴らしいと思ったのですけど、中にはいろいろ言う人がいるじゃないですか。たとえば2014年にノーベル平和賞を取ったパキスタンの活動家であるマララ・ユスフザイちゃん。あの子のスピーチに対して「LとRの発音が間違っている」という書き込みをネットでみたときには、呆れを通り越して笑っちゃいましたよ。「スピーチの素晴らしさに比べたら、それ、どうでもいいでしょ」と。

日本人はそういう揚げ足取りみたいなことをお互いにしているから場数も踏めず、なかなかスピーキングが上達しない理由になっていると思いますね。

その点、日米学生会議のときの僕は完全に開き直っていました。今から考えたら無茶苦茶な英語だったと思いますよ。

世界に出遅れた日本人
【三宅】ただ、小学校の英語導入に関してはすごく反対がありました。今でも反対される方がいらっしゃいます。

【茂木】反対している場合じゃないですよね。今、世の中ではグローバルということが言われていますけど、英語をしゃべれないのは日本だけですよ。シンガポールやフィリピンは当然ですけど、インド人も中国人もタイ人でもベトナム人も当たり前のように英語をしゃべります。

世界には数千の言語があるのでそれすべてを習得するのは無理です。だから、とにかくみんなが共通言語として英語をしゃべって、グローバルに交流する。そのなかに日本人も入りたいですよね。そしてそのためには、やはり英語をあたり前のものとしてアプローチできるようにならないとダメだなと思います。

【三宅】「英語をやると日本語ができなくなる」といった理論を聞いたこともあります。

【茂木】その心配はないでしょうね。世界を見渡してもバイリンガル環境で育つ子どもはごくごく普通にいるでしょう。ご両親の言葉が違う子どももいれば、数百の言語をもつインドのように、ひとつの地域で複数の言語が使われる環境で育つ子もいます。

2019.1.24 プレジデントオンライン全文
https://president.jp/articles/-/27362