https://www.oricon.co.jp/news/2117990/full/
2018-08-22 10:52

 大ヒット中の映画『カメラを止めるな!』をめぐり、映画の「原作」を主張する元劇団主宰の和田亮一氏が、上田慎一郎監督ら製作者側の著作権侵害を告発し騒動となっている。自身が手がけた舞台作品と同映画に多くの類似があると指摘する和田氏と、舞台と映画のストーリーは「全く別物」と主張する監督側の言い分に食い違いも見られ、和田氏側が今後、訴訟など法的手段に踏み切るのかも注目される。ORICON NEWSでは、レイ法律事務所の河西邦剛弁護士に本件の問題点を取材した。

 きのう21日発売の『FLASH』記事では、劇団「PEACE」(現在は解散)を主宰していた和田氏が、映画の原作は自身が演出などを務めた劇団の舞台作品『GHOST IN THE BOX!』であると主張。上田監督は同舞台を観劇し劇団関係者にも映画化の意志を伝えていたが、昨年11月に映画が先行公開された際、作品のクレジットには劇団「PEACE」と和田氏ら舞台に携わった人物の名前が記載されていなかった。その後、劇団や和田氏の名前は配給拡大にあたり「原案」「スペシャルサンクス」とクレジットされたが、和田氏側はあくまで「原作」として記載されるべきと自身のSNSでも主張している。

冒頭にも記したとおり、和田氏が本作について「原作」の舞台を映画化したものと捉えているのに対し、上田監督側は舞台に「着想を得て企画・製作した」としつつも「映画は上田監督自身による脚本、監督、編集というように本舞台とは独自の形で製作」したと、きのう発表した文書で主張している点が食い違っており、「著作権侵害」と認定されるかが目下のところ最大の争点となりそうだ。

 河西弁護士は、「著作権侵害」となる前提・条件について次のように解説する。「法律上は、既存の他者の著作物を利用して、本質的な特徴が同一のものを作ったのか(『翻案』といい著作権法上違法となる)、それとも、既存の著作物に影響などを受けつつも、独自の表現物を作ったといえるのか、ということを問題にしていきます。仮に今回の映画が舞台の脚本を、許可をとらずに『翻案』したものであると裁判で認定された場合には、著作権法上違法となります」(※以下、「 」内はすべて河西弁護士)。

 「訴訟になった場合、原告サイドは差止めや損害賠償請求を求めていくと考えられます。訴訟では、1.元の舞台の脚本家は誰といえるのか 2.上田監督が既存の脚本を利用したのか(舞台を見に行ったのか、など) 3.類似点や相違点から見て、本質的な特徴が同一といえるか 4.脚本家の許諾はあるのか、などが争点になると考えられます。

 脚本についての翻案権を侵害したという場合には著作権侵害となりますが、単にいくつか類似点があるというだけで翻案権侵害になるわけではなく、『既存の他人の著作物を利用したもの』であって、『作品の本質的な特徴である独自の表現について類似性がある』場合に翻案と言えます。

 記事を見る限り、2.について上田監督は問題となった舞台を見ていたというのであるし、上田監督自身も利用したこと自体は認めているようです。また、3. は、両者の起承転結等のストーリーの中核部分、場面設定、登場人物の設定、さらには中核的なセリフ、重要な場面転換が類似しているといえるのであれば、翻案となり裁判において著作権侵害と認定される可能性はあり得ます」。

 上記の通り、上田監督は舞台を観劇し着想を得たことを認めているが、舞台・映画双方の“類似点”だけでは根拠としては弱く、今後は舞台の脚本家(『FLASH』記事では「A氏」)も含め、作品の「本質的な特徴」の類似性を検証する必要がありそうだ。

 今回の騒動でもう一点注目されているのが、劇団の舞台作品が現状「原案」とクレジットされており、和田氏らが「原作」表記を希望していること。「原作」と「原案」に法的な解釈の違いはあるのだろうか。
続く