00013倍理論 ★
2018/06/21(木) 18:39:12.03ID:CAP_USER9ロシアW杯、日本にとっての初戦・コロンビア戦は昌子源にとって記念すべきW杯デビュー戦となった。
いきなり初戦スタメンという重圧の中で彼が見せたのは、ピッチ全体を見渡し、日本にとって危険なところを鋭い身体の寄せで潰す技術。さらに、コンビを組んだ吉田麻也がより前で積極的に潰せるように、的確なカバーリングで守備ラインを巧みにコントロールする術だ。その姿はまさに“DFリーダー”そのものだった。
この躍動ぶりは直前まで多くの人が予想していなかった。それもそのはずで、当初CBのレギュラーは吉田と槙野智章と見なされていたからだ。
昌子はアギーレ元監督が就任してから代表に選ばれたが、あくまでCBとしての控えだった。ハリルホジッチ監督に代わってからも立ち位置は変わらず、西野朗監督が就任してからもW杯最終メンバー入りはしたが、序列に変化はなかった。
吉田とのCBコンビで見せた安定感。
しかしW杯直前の最終調整試合となったパラグアイ戦で、序列は大きく変わった。
国内壮行試合となったガーナ戦、そしてスイス戦はベンチだったが、この2試合で攻守において閉塞感が漂ったチームは2連敗。メンバーを大幅に入れ替えて臨んだパラグアイ戦で昌子はスタメン出場を果たすと存在感を発揮した。
攻撃面でもボールを持ち出して効果的な縦パスを幾度も打ち込み、51分には乾貴士の同点ゴールの起点ともなったのだ。
結果は4-2で西野ジャパンの初勝利。この活躍で一気にW杯スタメン候補となった。
そして迎えた6月19日のコロンビア戦で、昌子は吉田とCBコンビを組み、スタメンに名を連ねた。
立ち上がり早々にコロンビアMFのカルロス・サンチェスが一発退場し、PKを得ると、これを香川真司がきっちりと決めてリードを奪った。ただその後の日本は数的優位に立ちながら、ファルカオ、クアドラドらタレントを有するコロンビア攻撃陣に押し込まれるシーンが多かった。
大迫の得点後、昌子はセンターサークルに。
その中で昌子はパラグアイ戦同様にDFリーダーとしての才を存分に発揮した。常にカウンターを警戒し、縦パスが入ると鋭いダッシュで身体を寄せて断ち切る。彼のバランス感覚と高いボール奪取能力に日本は何度も救われた。
そして、一番のハイライトは73分、本田圭佑の左CKから大迫勇也の決勝ゴールが決まった直後だ。日本ベンチに向かって一直線に走り出す大迫を他の選手達も追いかけるように走り、ベンチまで歓喜の輪が広がった時のことだ。
そこに、昌子の姿はなかった。
昌子は歓喜の輪には加わらず、センターサークルの中に立っていた。同点に追いつきたいコロンビアの急いでキックオフをしたい気持ちを抑え込むかのように、仁王立ちしていた。
その気迫はテレビの画面越しでも十分に伝わったはずだ。
パラグアイ戦、そして2-1の歴史的勝利を飾ったコロンビア戦で彼が示したものは、これまで貫き通して来たCBとしての強烈な信念だった。
「点が入った」という事実だけで十分。
昨年、昌子の取材に行き、彼と「センターバック論」について激しく意見を戦わせた時のことだった。
「CBがやるべき一番大事なことは“失点をしないこと”なんです。そのために僕らが存在する。だからこそ、常に失点の危険性がある場所に気を配り続けないといけないんです」
こう力強く言い切る彼に「攻撃時も常にリスクマネジメントはしないといけないし、それがDFの役目。どう対応しているのか?」と率直な質問をぶつけてみた。すると彼は迷わずこう口を開いた。
「極論を言うと、僕らはFWがどんな形でシュートを決めたかとか、誰が決めたかとかは関係ないんです。『点が入った』。その事実だけで十分。
例えば右サイドを突破したとします。それまでの流れは見ていますが、その右サイドの選手がクロスを上げた瞬間に僕はすぐ“クリアされた時、どこにボールが渡ったら危険か”、“相手の選手はどこにいるか”、“守備陣形は整っているか”といったことを考えているんです。
もしそこで味方のシュートをじっくりと見てしまうとする。そこで相手に弾かれたり、GKがキャッチしてカウンターを食らってしまえば、対処できなくなってしまう。それが一番の問題になります。自分はリスクマネジメントをして、結果として点が入っていたらそれでOKなんです」