1993年5月15日に日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が開幕して25周年を迎えた。この国の方々にちらばった種は落ちた先々で芽をのぞかせ、それぞれが独自の成長過程をたどっている。リーグとともに歩んだ老舗クラブ、下部リーグで体力を蓄える新進クラブ。それぞれにカラーがあるが、ローカリズムの旗とともにあるのはどのクラブも変わらない。

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大企業をバックに持つJ1勢に資金力で譲っても、創意工夫では負けない。下部リーグにもそんな威勢のいいクラブが出てきた。

 J3のFC琉球は昨年、台湾サッカー協会とパートナーシップ協定を結んだ。日本協会と海外の協会の提携は珍しくないが、クラブ同士は異例。「地理的に近い台湾から観客を集めたい」とクラブ広報は狙いを語る。

 台北―那覇間は航空機で1時間半。集客策の一環で「台湾初のJリーガーも獲得できれば」と現地でタレント発掘を始めている。台湾の世界ランキングは121位。近年、Jリーグに選手を送り込んでいるタイの122位と同格だ。プロリーグ創設の構想もあり、今後の発展も見込める。

 琉球は2014年のJ3昇格後に停滞したが、16年シーズン終了後に倉林啓士郎社長が就任してから上げ潮を迎えている。昨季の1試合平均観客動員は2500人で前季比約1000人増。近く新スタジアムも手に入る。沖縄県が那覇市内に23年開業を目指して造る計画。2万人収容の専用球技場で市街地に近い。

 J2、J3勢のスタジアム構想は他にもある。J2京都は、府がJR亀岡駅近くにスタジアムを建設中で20年度に完成予定。J2暮らしが8年目となる古参クラブの反攻の拠点となり得る。

■自前のスタジアムが課題

 ただし、試合の日にサッカーを見せるだけのホームでは、いつまでたっても仮の宿りのまま。世界のスポーツビジネスではクラブが施設の運営権を握り、ファンサービスと収益力を高めるのが当たり前になっている。プロ野球のソフトバンクやDeNAの躍進も、常打ち球場の保有と運用に支えられているが、Jクラブの多くはこの点をクリアできていない。

日本のスポーツ施設はほとんどが自治体の持ち物で、管理を委ねられたクラブはJ1鹿島やG大阪などごく一部。下部リーグとなると、店賃(たなちん)の払いに窮するクラブがざらにある。ただの店子(たなこ)から施設の管理人になって、試合のない日のイベント開催などの注文をとる側に回れたら……。このビジネスモデルはこれからのスタジアム構想に不可欠で、FC琉球も「何らかの形で運営に関わりたい」と意気込む。

 同じJ3の秋田にもスタジアム構想があるほか、これからJ参入を目指すクラブも意欲的だ。日本フットボールリーグ(JFL)のFC今治(愛媛県今治市)は、昨年完成した5000人収容の器を自前で運営、J1基準を満たす1万5000人規模の施設新造も検討する。東北社会人2部リーグのいわきFCも福島県いわき市と協力して構想を抱く。

 スタジアムを住まいに、そこに集う人をファミリーに。津々浦々で始まった「マイホーム計画」は、リーグが次の25年を歩むための羅針盤となるはずだ。