奈良が発祥の古武道で、伝統的に男性のみで継承されてきた「宝蔵院流槍術(そうじゅつ)」が昨年から女性の
受け入れを始め、7日に京都市在住の鈴木八寿子(やすこ)さん(48)が国内の女性入門者で初めて初級への
昇級審査に挑む。宝蔵院流第二十一世宗家の一箭(いちや)順三さん(69)は「技の伝承に性別は関係ない。
後輩を引っ張る存在になってほしい」と期待を寄せる。

約460年前、興福寺(奈良市)の子院「宝蔵院」の僧・胤栄(いんえい)が創始したとされ、先が十文字形になっている
「鎌槍(かまやり)」を使うのが特徴。現在、奈良のほか、大阪や名古屋、さらにドイツの道場で約100人が修練を積む。

武家を中心に広まったことから、男性のみでの稽古(けいこ)が定着し受け継がれてきたが、近年、女性の入門希望者から
問い合わせを受けるように。一箭さんは「伝統だけを理由に女性を断るのには違和感があった」という。ドイツの道場では
例外的に女性も受け入れていたが、昨春から正式に伝統を改め、女性に門戸を開いた。国内では現在、奈良道場で
女性3人が稽古に励む。

審査に挑む鈴木さんは、夫の直(なおし)さん(48)の誘いで体験会に参加した。元々、運動は好きではなかったが、
「重い棒を振り回す非日常感と、練習生の楽しそうな様子」に引かれ、昨年4月に入門。週1回2時間、基本動作や
型の練習を重ねてきた。

鎌槍は長さが2・7メートル、重さは約2・1キロあり、最初は持っているだけで手が震えたという。徐々に筋肉もつき、
コツをつかむことで、槍の重さにも慣れてきた。「少しでも軽く感じる槍を選んで勧めてくれる先輩たちのサポートにも
助けられた」と振り返る。

審査では、14種類の型を披露する予定。自宅でも自作のメモを見て復習するなど余念がない。鈴木さんは「稽古を続け、
槍を持ったらしゃきっとするような、かっこいいおばあちゃんになりたい」と意気込む。

https://mainichi.jp/articles/20180405/ddl/k29/040/426000c