想像を絶する金額の契約が連日報じられるMLBだが、その舞台を目指すマイナーリーガーの環境は過酷だ。これまでも年収100万円以下という選手も少なくない状況だったが、米政府の追認によってさらに過酷な状況に追い込まれる可能性が浮上している。

■マイナーリーガーは賃金規制対象外に

 3月22日(日本時間23日)に1兆3000億ドル(約136兆円)の包括的な歳出法案が米下院で可決された。23日(同24日)の深夜までにトランプ大統領が署名することによって同法案は成立し、懸念されていた政府機関の閉鎖は回避される。

 2232ページにも渡る膨大な法案の中に、マイナーリーガー達の生活権を脅かす法令が含まれていることが、スポーツ関係に限らず数多くの主要メディアで取り上げられている。

 「Save America’s Pastime Act(アメリカの娯楽を保護する)」と名付けられたこの法令は、その名に反してマイナーリーガーを最低賃金や時間外労働賃金を保障する労働基準法の適用対象外と定めるものだ。現在米国の最低時間給は7ドル25セント(約760円)。週5日、1日あたりの勤務時間を8時間とすると、労働法で定められた1か月の最低賃金は1160ドル(約12万円)になる。週40時間以上働くと時間外労働賃金が発生する。

■日本プロ野球の2軍は恵まれた環境

 仮に法定最低賃金の月額1,160ドルが保障されたとしても、支給されるのはシーズンがある4月から9月までの間に過ぎない。約160日間のシーズンで140ゲームをこなし、長距離バスや格安航空便での過酷な移動に耐え、それでも年収は100万円以下、というのが多くのマイナーリーガーの現実なのだ。

 当然、野球だけでは生活が成り立たず、選手の多くはシーズンオフに副業をこなすか、配偶者や恋人の収入に頼ることになる。メジャーに昇格することなく引退していく選手の多くは野球の実力不足の前に生活苦から夢をあきらめる。

 世界最強の労働組合と呼ばれるメジャーリーグ選手会も彼らの助けにはならない。メジャー選手会に入会資格があるのは、各チーム40人ロースターに入っているメジャーリーガーのみだからだ。

  ひるがえって日本プロ野球の事情はどうか。2軍支配下選手の最低保証年俸は440万円、育成選手は240万円である。1軍のスター選手が手にする大金とは比べようもないが、独身の選手なら生活は出来る金額とは言えそうだ。少なくとも同レベルのマイナー選手よりはるかに金銭的な待遇は良い。

 100億円、200億円と言った巨額契約がしばしば報道されるように、一般的にメジャーリーグは日本プロ野球の1軍より年俸が高い。その代わり、日本プロ野球の2軍以下はマイナーリーグより恵まれた環境のようだ。

 どうやらキャリアが浅い若い時期に日本プロ野球のファームで生活を保証されたうえで腕を磨くことが、マイナーリーグに挑戦するより、野球選手にとって経済的合理性が高く安全なキャリアパスなのかもしれない。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180325-00010000-baseballc-base