http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42914664

ヘリエ・チュン記者、BBCニュース

2018/02/02
英国の舞台やテレビ・映画界で働く東アジア系の英国人俳優たちは、配役にあたって自分たちが今でも深刻な偏見を受けていると主張する。「目に見えない」マイノリティーとして扱われる恐れがあると懸念している。

女優のルーシー・シーン氏は、「東アジア系はステレオタイプな役柄に配役されたり、人種差別的な使われ方をすることが多い」と話す。

「コール・ザ・ミッドワイフ」や「イーストエンダース」などの人気ドラマに出演し、戯曲家でもあるシーン氏は、「女性はだいたい、スリムで小柄で髪の長い、従順な『蓮の花』のような役か、その逆で売春婦や不法移民として描かれる。一方で、東アジア系男性は中性的で男らしくない存在として描かれる」
東アジア系の俳優が、人種に関係のない役に選ばれることは珍しく、役の一環として中国人のアクセントを求められることが多いとシーン氏は言う。それでもなお、多くのプロデューサーは、中国人の役に白人俳優を使う「イエローフェイス」は許されるという認識なのだという。

シーン氏など複数の東アジア系英国人の戯曲家による初の作品集「Foreign Goods(外国製品)」が、このほど発表された。
編さんしたのは香港出身の戯曲家、ジンアン・ヨン氏。ヨン氏は「東アジア系の人たちの物語や声が、国中の舞台で足りていない」と話す。
「自分たちが正しく描かれていることは大事です。どう表現されているかで、人の認識は作られる。特に若いときはテレビやアート、本から、振る舞い方を学ぶので」

「ダブルスタンダード」

東アジア系英国人が芸術や娯楽分野で正しく表現されていない。そう感じる人は多い。
映画「ハリー・ポッター」シリーズに出演した女優ケイティー・リュン氏は以前、ステレオタイプに立ち向かうのは「大変」だとBBCに話した。ドラマ「ヒューマンズ」のスター、ジェマ・チャン氏は英紙テレグラフに、「ハリウッド映画ではアジア系女性よりも、エイリアンの方がたくさんいる」と話した。

中国を舞台にした昨年の舞台「In the Depths of Dead Love」の出演者が全員白人だったため、数十人がロンドンのプリントルーム劇場前で抗議した。リュン氏とチャン氏も参加した。
チャン氏は当日、「伝説のベネディクト・ウォンとプリントルームでの愛のある抗議」とツイートした。

ロンドン大学ロイヤルホロウェイでドラマや演劇、ダンスについて教える上級講師のアシュリー・ソープ博士は、東アジア系英国人に対して「歴史的な差別の慣習が長く続いている」と指摘する。
「ほかの人種や民族に置き換えたら、考えられないような慣習が今も続いている。例えば、今となっては白人俳優が衣装と化粧をつけて、黒人の役を演じるなど絶対に考えられないはずだ」

東アジア系の配役については、ダブルスタンダード(二重基準)が働いていると、ソープ博士は言う。
英国の演劇では、肌の色にこだわらない配役、あるいは演劇作品の「普遍性」を理由に、白人の役に有色人種をキャスティングすることが多い。しかし東アジア系俳優に対しては、これが東アジア系の役だからといって東アジア系の俳優を起用しないことの言い訳に使われることがあるという。

「しかも同時に、東アジア系英国人は、なかなか他の人種の役に起用されない」
「東アジア系の俳優の間には、自分は決まったタイプの役、東アジア系の役しか与えられないという感覚が強い。なまりの強い英語を話す役か、移民の役が多い」
(リンク先に続きあり)

(英語記事 British East Asian actors 'face prejudice in theatre and TV')

「目に見えないが本物」。2017年の抗議行動「イエローフェイス」ポスター
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/9E66/production/_99805504_notseenbutreal.jpg