プロ、アマ合同の日本野球規則委員会が開かれ、公認野球規則からいわゆる「2段モーション」を
反則投球とする項目が削除され、これまで禁止されていた「2段モーション」が唐突に解禁の方向になった。

理由は、また「国際化」ということらしい。筆者は、元来、「2段モーションの厳格な禁止」は、
もう廃止にすべきだという考え方だったから、今回の英断には大賛成である。
ただ、なぜ今だったのか、そして昨季、西武の菊池雄星を悩ませた「2段モーション厳格化問題」は何だったのか、という疑問が残る。

菊池は昨年8月17日の楽天戦と24日のソフトバンク戦で、計3回にわたって反則投球の判定を受け、
ソフトバンク戦では、その判定で我を失ったように3回7失点KOされている。
ヤクルトの小川泰弘やロッテの涌井秀章、石川歩、楽天の高梨雄平など、他にも「2段モーション」について
“灰色の投手”がいたにもかかわらず審判によってマチマチの曖昧な基準によって菊池が狙い打ちにされた。

西武側も抗議。NPBの審判団と話し合いを持ちながら菊池がフォーム修正したことで解決されたが、
この菊池の問題が議論を呼び、今回の「2段モーション解禁」につながったという。

だが、菊池が失った1勝もフォーム修正に四苦八苦した無駄な時間も帰ってこない。
もっと言えば、この「2段モーション」の厳格な禁止ルールは、アテネ五輪やWBCの経験から
「国際化に対応する」との理由で2006年から本格導入されたが、当時「2段モーション」の警告を受けて
フォーム修正を余儀なくされた阪神の藤川球児、横浜の三浦大輔、楽天の岩隈久志、ソフトバンクの斉藤和巳らの苦労はなんだったのか。

そもそもメジャーでもメジャー規則にのっとったWBCなどの国際ルールにも「2段モーション禁止」など
明記されておらず、12年前の導入理由にも無理があったのである。
 
岩隈は、その年、わずか1勝に終わっておりスポーツライターの丹羽政善氏の取材に対して
「肩が痛かったこともあったが(フォーム修正と1勝に終わった不調は)無関係でなかった」と語っている。

岩隈の場合、スムーズな体重移動と、ボールのリリースと足の動きとをリンクさせるために苦労して身につけた
モーションを修正しなけらばアウトとされていたのだから、なおさら。
しかも、岩隈はメジャー移籍後は、一切「2段モーション」の指摘を受けることもなく、菊池が参考にしている
ドジャースのエース、クレイトン・カーショーなど日本のルールに照らせば明らかな「2段モーション」の投手が
メジャーでは正々堂々とまかり通っているのだ。

目指していた「国際化」が「国際化」でもなんでもなかったことに気づくまで12年間も「2段モーション禁止ルール」が
放置されたままだったのだ。この罪は重い。NPBの対応があまりに遅すぎた。選手は生活がかかっているのである。

(続きます)
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