開幕まで70日を切る平昌五輪で新たな問題となっているのが、宿泊代の「ぼったくり」だ。開催地の江原道・江陵市が遅まきながら撲滅に乗り出したという。約65兆ウォン(約6兆5000億円)と推算される経済効果にあやかろうと、江陵市などでは通常の5〜8倍の宿泊代を設定する宿泊業者が横行。ぼったくりを嫌って多くの観光客が開催地周辺で宿泊せず、大量の「空室」が発生する悪影響が出る恐れがあるという。それでなくても高額なチケットも相まって韓国国民でさえ観戦をためらい、不振のチケット販売は決して好調とは言えない。11月末で販売率はようやく目標の52%に達したものの、これも政府の呼びかけに自治体が予算を組んで応じたためだとの見方もある。このままでは本当に“閑古鳥”が鳴く五輪になりそうだ。

 朝鮮日報が11月25日、江陵市のぼったくり撲滅を報じた。12月1日から作業部会を設置して取り締まるという。ソウル首都圏から約280キロ離れた五輪開催地だが、12月下旬に開通する高速鉄道(KTX)で仁川国際空港から江陵まで最短で2時間20分で行けるようになる。韓国鉄道公社は宿泊の負担なく気軽に五輪観戦ができるよう、KTXを江陵とソウル市内の清凉里間で午前1時まで運行させる方針という。江原道は1日に最大6万人の宿泊者を予測しているが、KTXの運行とぼったくりで、江陵市は最悪の場合「大量の五輪空室」問題が発生すると危機感を募らせていると報じられた。

 この事態は懸念で終わりそうもない。実際、中央日報は11月22日、「平昌に行きたいが…韓国国民、平昌五輪行きをためらう理由」という見出しの記事で、高い入場券価格と通常の6〜8倍に高騰して「ぼったくり」とまで酷評される宿泊代、そして氷点下10度前後となる寒さの3点の理由を挙げた。

 同紙は具体例を紹介した。子供2人の4人家族が1泊2日で平昌五輪で人気種目のショートトラックを観戦する場合、まず入場券A席(55万ウォン=約5万5000円、子供は半額)で165万ウォン(約16万5000円)がかかり、実施される江陵アイスアリーナ近くのモーテルの宿泊代で40万ウォン(約4万円)。さらに交通費と食費がそれぞれ20万ウォン(約2万円)と想定すると合計245万ウォン(約25万円)の支出となる。

 平均的な月給が約324万ウォン(約32万円、雇用労働省発表)なのを考えると大変な出費だ。中央日報は「経費が掛かりすぎてテレビで見るしかないのか迷っている」と、この具体例のモデルとなった30代の会社員のコメントを紹介した。

 平昌五輪のチケット価格は2万〜150万ウォン(約2000〜15万円)で平均14万ウォン(約1万4000円)。中央日報によると、チケット価格は国際オリンピック委員会との協議を経て策定。2014年ソチ五輪の1万8000〜184万ウォン(約1800〜約18万円)と同水準で設定したとするが、韓国内では当初から「高すぎる」と批判が出ていた。

 その影響だろう。文化体育観光省の9月末のアンケート結果で、実際に競技場で観戦すると答えた韓国国民は7.1%と過去3回の調査と比べて最も低かった。このため、11月20日時点で大会組織委員会が販売目標に設定したチケット107万枚のうち、販売されたのは43.2%に当たる約46万枚と中央日報は報じていた。ところが、わずか4日後の24日時点で組織委は52%に達したと発表したと聯合ニュースは伝えた。

 中央日報は40%を突破した状況に関して、李洛淵(イ・ナギョン)首相が10月17日の閣僚会議で政府、自治体の入場券購入を強調した結果と伝えた。ソウル市は10億ウォン(約1億円)超の予算を編成。慶尚南・北道はともに入場券関連予算として5億ウォン(約5000万円)の予算を策定した。全国銀行連合会も人気の低い雪上競技の入場券を10億ウォン(約1億円)分を買うことにしたと報じた。

 一方の宿泊問題。開催地の江原道は最大で1日10万人の観客を想定し、約6万人が宿泊すると予想。2人1室の宿泊を仮定すると、3万室が必要になる。しかし、10月末に中央日報のインタビューに応じた江原道知事は確保した客室数が6649室と語った。残りは近隣都市の施設で解決できると考えているとした。開催地の江陵、平昌では「部屋探し戦争が避けられない」と中央日報は指摘した。

>>2以降に続きます

2017.12.8 08:00
http://www.sankei.com/premium/news/171208/prm1712080002-n1.html