2017年11月17日 8時7分
 【ソウル=桜井紀雄】世界反ドーピング機関(WADA)は16日、ソウルで理事会を開き、組織的ドーピング問題によるロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止処分を継続する方針を決めた。

 資格回復が見送られたことで、ロシア選手団が韓国で来年2、3月開催の平昌五輪・パラリンピックに出場できない可能性が高まった。

 WADAは、ロシア側に提示した条件が満たされなかったと結論付けた。ロシアの国家ぐるみのドーピングを認定した調査チームの報告書内容を公式に認めるよう要求していたが、ロシア側は一貫して疑惑を否定。モスクワの検査所で保管している選手の尿検体の提供にも応じなかった。

 ロシア陸上界の組織的ドーピング問題を受け、WADAは2015年11月からRUSADAの資格を停止している。露連邦捜査委員会は今月8日、国家ぐるみのドーピングはなかったとする捜査結果を発表した。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、14年のソチ五輪で採取した露選手の検体の再検査を実施しており、既に失格者が相次いでいる。今回のWADAの決定も踏まえて、12月の理事会で平昌大会への出場の可否を最終判断する方針。

 国際パラリンピック委員会(IPC)も年内には決定を出す見通しだが、RUSADAの資格回復を「大きな判断材料」とみており、露選手団の平昌出場は極めて難しい状況だ。昨年のリオデジャネイロ大会ではロシアを全面除外した。

 WADAの毅然(きぜん)とした決定は予想された内容だ。かねてWADAはRUSADAの資格回復の条件として、国ぐるみのドーピングをロシアが公式に認めることなどを求めていたが、ロシア側は、これを否定。今月8日には、ロシア連邦捜査委員会が2014年ソチ五輪に出場した自国選手らを調査した結果として、「組織的な不正はなかった」と改めて結論付けていたからだ。

 今後の焦点はWADAの決定を受け、IOCとIPCが平昌大会に向けて、どう対応するかに移る。昨夏のリオデジャネイロ大会の際はIPCがロシア選手団を全面除外。IOCはそれぞれの国際競技連盟(IF)に参加の可否を委ねたが、かたくななロシアに対して、今回はより厳格な対応を迫られそうだ。

 実際、IOCはリオ五輪以降、不正を許さぬ姿勢を強調し続けている。9月の総会では五輪憲章を改定しドーピング違反を犯した選手やチームに罰金を科せる条文を追加。ソチ五輪で採取したロシア選手の検体も再検査、ノルディックスキー距離男子50キロフリー金メダル、アレクサンドル・レグコフらを失格処分として五輪から永久追放した。

 9月には日本やドイツ、英国、米国などの反ドーピング機関が「意図的に規則に違反した指導者や組織に五輪出場資格を与えるべきではない」と、平昌五輪からロシアを除外するよう要求する共同声明を発表している。周囲の視線が厳しいのは、これがロシア選手のみならず、世界中のクリーンなアスリートにも関わる問題だからだ。

 東京都内で今月15日、08年北京五輪レスリング男子フリースタイル60キロ級代表、湯元健一氏へのメダル授与式が行われた。2位のウクライナ選手がドーピング再検査で失格となり、銅メダルから銀に繰り上がった。9年以上たってから正当な評価を受けた湯元氏は「正直言うと、非常に複雑」とコメントしている。

 冬季競技大国ロシアを全面排除すれば、五輪・パラリンピック全体への影響は計り知れないほど大きいのは確か。IOCは12月の理事会で大きな決断を迫られる。(宝田将志)



【用語解説】世界反ドーピング機関

 反ドーピング活動を推進するため、1999年、国際オリンピック委員会から独立して設立された国際機関。ドーピング防止を目的に、統一した検査基準に基づいて違反への制裁などを科している。本部はカナダ・モントリオール。

http://news.livedoor.com/lite/article_detail/13902839/