いずれも歴代最多となる通算1050勝、幕内最高優勝39回。名古屋場所で白鵬は改めて「角界史上最強の横綱」を証明してみせた。その白鵬が、ついに日本国籍取得を決めた。

 白鵬の独壇場となった大相撲名古屋場所。その千秋楽翌日に開かれた横綱審議委員会で北村正任委員長は通算勝利数が歴代最多となったことを「大変な偉業」と称える一方、「張り手など若干横綱らしくない取り口も見えた。私はあまり良い印象をもってない」と注文をつけた。

 大記録を打ち立ててなお、「伝統ある国技」の最高位に相応しいのかという議論が、白鵬にはつきまとう。

「本人としては、忸怩たる思いがあるでしょう。不祥事続きで相撲人気が低迷していた時代を支えたという自負もある。さらに今年は日本人横綱・稀勢の里が誕生し、人気がそちらへ一気に流れた。軽んじられていると考えておかしくない」(協会関係者)

 記念すべき節目となったはずの名古屋場所でも、白鵬は苦悩の末の決断を強いられた。

 12日目に関脇・玉鷲を寄り切りで下して元大関・魁皇(現・浅香山親方)の持つ歴代最多1047勝に並んだ翌日、スポーツ各紙が一斉に「白鵬が日本国籍を取得する考えを持っていることがわかった」と報じたのだ。これは今後の角界に大きなインパクトを与える決断である。

「もともと白鵬は横綱になった時点で“相撲界に恩返しするために、将来は部屋を持って弟子を育てたい”という夢があった。ただ、同時に“日本人よりも相撲をよく知っている”という思いと、後進のためにくさびを打ち込みたいという考えから、モンゴル国籍のまま親方になりたいという希望も強く持っていた」(担当記者)

 年寄株を持つ親方になるには、最高位が小結以上、幕内在位通算20場所以上、関取(十両以上)通算30場所以上のいずれかを満たした上で、「日本国籍を有する者」が条件となる。白鵬は来日10年となった2011年には日本の永住権を取得しているが、国籍は変更していない。

「白鵬が考えたのは、著しい功績を挙げた横綱だけに認められる『一代年寄』であれば、特例としてモンゴル国籍での襲名が認められるのではないかという道です」(同前)

 現役の四股名をそのまま名跡とする「一代年寄」は大鵬、北の湖、貴乃花という大横綱にのみ認められてきた。「幕内最高優勝20回以上」が襲名を認められる目安とされる。もちろん、成績の上では白鵬にもその資格がある。

 だが、たとえ一代年寄であっても、“国籍条項”の特例は認められないという姿勢を協会が崩すことはなかった。

 本誌・週刊ポストは2015年3月の大阪場所中、生前の北の湖理事長(当時)にこの問題を直撃している。「白鵬はモンゴル国籍のままでは一代年寄を襲名できないのか?」の問いに、北の湖理事長はこう応じている。

「ダメダメ。一代でもなんでも年寄なのだから、日本国籍を有する者と決められている。どんな実績があっても、これは規則です。相撲は日本国の伝統ある国技ですからね。ダメなものはダメ。日本の伝統は曲げられません」

 現在の八角理事長(元横綱・北勝海)もその方針を引き継いできた。

「白鵬は、“モンゴル国籍のまま一代年寄になりたい”と各所で公言し、協会改革派である貴乃花親方に接近して特例を認めてもらうなどの術を探っていたが、うまくいかなかった。前人未到の記録を打ち立てながら、引退したら協会を去らなければならない状況に追い込まれていたのです」(前出の担当記者)

 そうしたなかで、ついに白鵬の「国籍変更」の意向が明らかになったのだ。

https://www.news-postseven.com/archives/20170801_600278.html