CBはフィジカル的に、メンタル的に相手の攻撃を跳ね返し、守りきる強靱さと忍耐力が必要になる。高さの点も含め、日本人はそのインテンシティで劣る部分があるのだろう。フィリップ・トルシエ、ジーコが日本代表監督として3バックを選択したのは、「2人のセンターバックで守るには物足りない」と判断したからだ。

「悪くはないが、サイズが小さい」

欧州のスカウトはしばしば眉をひそめるが、Jリーグから海外に打って出る日本人CBが少ないのは、一つの必然なのだろう。

しかし、本当に単純な高さや強さが懸案なのだろうか?

日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチが、代表常連CBだった森重真人(FC東京)を外した理由は、その答えにもつながる。

◆マルディーニの守備者としての資質

守備者は攻撃者によって上達する。裏を掻く、自分の想像を超えるような攻撃者と対することで、守備者はその失敗も含めた積み重ねによって、成長を遂げる。むしろ、失敗を糧に一流となるのだ。

守備芸術の国イタリアが生んだ至高のディフェンダー、パオロ・マルディーニのルーツを取材していたときだった。父親のチェーザレに話を聞いた。

「パパ、心配することないよ。僕はただプレーを続ける。失敗だって受け入れる覚悟がある」

息子パオロは父に言ったという。

マルディーニは父がイタリア代表選手だったことから、十代の頃はそれを揶揄する声は絶えなかった。父がU―21代表監督でもあったことから、飛び級で選ばれたときには「親の七光り」と批判を浴びた。息子はそれでも粛々と「運命」を受け入れ、守備を極めていったという。

夏のバカンス、多くの若者たちがビーチで気楽に過ごしているときも、フィジカルメニューを怠ることはなかった。運命を受け入れる、とはそういうことなのだろう。ベストを尽くすことで、自分を裏切らない。謙虚に向き合い、自分を高める、克己心というのか。それによって、目の前のアタッカーに立ち塞がるだけでなく、世間の外圧にも、何より自分自身にも打ち克つことができた。

マルディーニは特別なプレーヤーだったが、自省するキャラクターは守備者としての資質と言えるだろう。

一流のCBはとにかく用心深い。ステップを踏み続け、相手を警戒する。どこが危険なのか、集中を切らさず、察知し、たとえ何が起きなくても準備をする。それを90分間続けられる。

そこで、森重の話になる。

つづく

小宮良之  | スポーツライター6/7(水) 11:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20170607-00071509/