だんだん暑くなってきましたね。新社会人にも慣れてきた頃でしょうか? 今回の作品を見に行ったとき、途中ですぐに“週刊実話の連載には絶対これ!”とピンときました。
 何歳になっても、会社勤めが何年経っても、不安やイライラっていっぱいありますよね。『ちょっと今から仕事やめてくる』のタイトルからして、若干、チャラいコメディーかなぁとも思いましたが、いえいえ、途中からすすり泣く声が劇場に響き渡りました。男性はもちろん、私みたいに仕事が大好きで、特に文句もなく楽しく生きてる人間でも、きっと刺さるエピソードがあると信じています。

 主人公は、工藤阿須加演じる青山隆。ブラック企業で働くけど、ノルマが厳しくて精神的に耐えられない状態に。悩みを抱えながらの過剰な仕事内容によって、駅のホームで意識を失い、あとギリギリで線路に落ちるところを、幼なじみのヤマモト(福士蒼汰)に助けられる。大阪弁で明るく振る舞うヤマモトのおかげで、青山隆は徐々に明るさを取り戻し、会社のために一生懸命働きます。でも、ヤマモトって男は、3年前に自殺していたことが分かる。
 ん? これはファンタジーなのか、それともミステリーなのか? 必要以上に厳しい上司の山上守や同僚、今まで面倒くさいと思っていた家族の存在との関係が変わり始め、このストーリーがどこへ向かうのかが気になるところ。

 職場での人間関係で悩む人は多いと思います。私も若かった頃、怒られて、教えてもらって、失敗してまたそれをバネにして頑張っていました。つらい時もあったけど、先輩にいろいろ教えてもらえることをありがたいと思わないと、上に上がれなかった。それは今でも同じだと思います。
 この作品を見た人の中には、吉田鋼太郎演じる厳しい上司に共感する人もいるでしょうし、女性が見たら黒木華演じる青山隆の憧れの先輩に同情する人もいるでしょう。個人的には、この会社で働く他の人たちに大きな問題があると思います! みなさんは、どう思うのだろうか?
 私は落ち込んでいることを忘れさせてくれる、謎のヤマモトみたいな明るい存在でいられたらいいなぁと思っています。でも、そういう明るさも、過去の悲しさや痛みを知るからこそ、できること。あなたの背中を押してくれる深い作品です。

画像提供元:(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会

監督/成島出
脚本/多和田久美、成島出
出演/福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎ほか
配給/東宝

 2017年5月27日全国東宝系にて公開。

 隆(工藤阿須加)は、疲労から駅のホームで意識を失い、電車に跳ねられそうになったところを、ヤマモト(福士蒼汰)という謎の男に助けられる。幼なじみと名乗るその青年に、まったく覚えのない隆だったが、交流を通して徐々に明るさを取り戻し、仕事の成績も上げていく。ところがある日、ふとしたことからヤマモトについて調べた隆は、ヤマモトが3年前に自殺していたという事実を知る。

LiLiCo:映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS「大様のブランチ」「水曜プレミア」、CX「ノンストップ」などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。


http://wjn.jp/article/detail/9848907/