FIFA理事会が、参加チーム数が48か国に拡大されることが決まっている2026年ワールドカップの大陸別出場枠を決定した。

3月末に突然発表されたインファンティノ会長からの提案をそのまま追認したもので、アジア枠は現在の「4.5」(プレーオフ枠を含む)から「8」に拡大されることになった。

ロシア・ワールドカップ予選ではどういうわけか大苦戦中の日本代表だが、出場枠が「8」になれば出場権は約束されたも同然になることだろう。めでたし、めでたし…。

しかし、「ワールドカップに出場するだけで嬉しい」というのなら、たしかに「めでたし、めでたし」なのだが、「日本代表を強化して、将来的には優勝を目指そう」という気持ちが少しでもあるのなら、そんな微温湯のような予選しか戦えないようでは困る。

数少ない出場枠を目指してイランや韓国といった強豪と激しい戦いを繰り広げて、お互いに切磋琢磨してこそ、強化が可能となるのではないだろうか? 

いや、できればアジアの枠を離れて世界の強豪と常に真剣勝負を戦うことが必要だ。つまり、予選は大陸別ではなく「世界予選」形式にして、ヨーロッパや南米の強豪と真剣勝負をできる環境を作ってほしいのだ。

さて、アジア以外の大陸の枠はアフリカ枠が「5」から「9」、北中米カリブ海が「3.5」から「6」、オセアニアが「0.55」から「1」とそれぞれほぼ倍増。南米も「4」から「6」と50%の増加になる。

それに対して、実力的に圧倒的な優位にあるヨーロッパ大陸の枠は「13」から「16」と「微増」にとどまった。要するに、サッカー後進地域が優遇されたのである。

もし、ワールドカップがサッカーの実力世界一を決める世界選手権であるのなら、やはり世界最強のヨーロッパにはさらに多くの出場枠を与えるべきだったはずだ。そして、2014年のブラジル大会で惨敗したアジア大陸の枠は本来なら縮小されるべきものだった。

それでも、ヨーロッパを微増にとどめたのは、FIFAはこのワールドカップという大会をスポーツの選手権としてではなく、サッカー普及の(あるいは金儲けの)ためのイベントと考えているからなのだろう。この辺りに、まさにFIFAの出場国拡大の思惑が透けて見える。

豊富な資金を投入して有名選手を「爆買い」したり、多くの強豪クラブを買収したりと、ヨーロッパのサッカー界に巨額の資金を投資しているのが中国やカタールをはじめとした中東産油国である。

だが、現状では中国も中東産油国も、ワールドカップ・アジア予選を突破して本大会に出場することは難しそうだ。それでは、彼らの「サッカー熱」もいつ冷めてしまうかわかったものではない。

たとえば、中国では「サッカー好き」と言われる習近平国家主席の号令の下、国策として「サッカー強国化」プロジェクトが推進されている。中央政府の政策に従って地方政府や大企業も多額の資金をサッカーにつぎ込んでいるのだ。

つづく
 
2017年05月15日17:35
http://www.jsports.co.jp/press/article/N2017051511134602.html