TSMC熊本工場、官民挙げて計画通り完工−ソニーや鹿島も尽力

半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)があす、熊本県菊陽町の半導体工場で開所式を行う。同工場は政府も多額の助成金をつぎ込み、官民が協力する一大事業の位置づけだ。建設業の人手不足が指摘される中でも、2022年4月の着工から2年足らずで計画通り完工した背景には、国内での半導体生産の知見が豊富なソニーグループや鹿島建設など民間企業の尽力もあった。

  畑の間にそびえるTSMCの熊本工場では、ピーク時は1日7000人以上の作業員が3交代24時間体制で建設作業に従事した。夜空に照明の光が反射し、車両が行き交う様子は地元で「不夜城」と呼ばれていた。

同工場を運営するTSMCの子会社には、ソニーGやトヨタ自動車も出資する。稼働すれば、日本でも有数の半導体供給拠点になる見通しだ。

  建設を担った鹿島曰く「超大規模工事」で、TSMCにとって海外での拠点新設はほぼ初めての経験。簡単ではないプロジェクトが順調に進んだ要因の一つが、ソニーGの貢献だ。

  準備が始まったのは21年にさかのぼる。同年初頭、長く誘致に向け努力してきた経済産業省に対し、TSMCはソニーと組むことを条件に日本に進出する用意があることを伝えた。両者に説得される形でソニーも協力を決意。

  同年7月にソニーGは菊陽町に用地取得の希望を伝え、9月には土地の造成が始まった。その場所に建設されるのはソニーではなくTSMCの工場だと同町の人々が知ったのは、約2カ月後のことだ。

  工場の設計段階では、地元自治体への開発・建築許可や取水・排水など多岐に渡る調整事項が発生。ソニーGはこうした分野でも力を貸した。同社の半導体子会社、ソニーセミコンダクタソリューションズによると、日本での工場運営に関するノウハウを活かし、熊本工場の立ち上げに協力をしたという。

  現地パートナーの存在はTSMCにとって大きかったとみられる。米アリゾナ州でも半導体工場の建設を進めるが、許認可取得に苦労した。熟練工不足や台湾よりも高い経費が課題となり、発表によると量産開始時期は24年末から25年に後ずれするという。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-22/S8Q8WKT1UM0W00