ウクライナに侵攻したロシアに対し、日本政府は長年の慣例を破り、厳しい対応に出た。

 ロシアが2014年、ウクライナ南部クリミア(Crimea)半島に侵攻した際、日本の対応は手ぬるいと見なされた。だ
が、今回は西側諸国と歩調を合わせてロシアに前例のない制裁を科し、厳しく非難。ウクライナに対しては、殺傷能力のない防衛装備品の提供にまで踏み込んだ。

「日本はこれまで、危機に際して金は出すが直接の関与は行わないと批判されてきた」と、仏シンクタンク「戦略研究財団(FRS)」のバレリー・ニケ(Valerie Niquet)アジア研究主任は語った。

 ニケ氏は、今回、日本政府は「行動することに重点を置いている」と指摘。「事態の推移を傍観しているだけではないことを示そうとしている」と話した。

 米シンクタンク「アメリカ進歩センター(CAP)」のトビアス・ハリス(Tobias Harris)上席研究員は、ロシアの個人を対象とする制裁などの措置を日本がスピード感を持って打ち出したことについて「日本政府がこれほど迅速に動くとは思っていなかった」と、驚きを隠さない。

テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)のジェームズ・D・J・ブラウン(James D.J. Brown)准教授(政治学)は、日本政府はこれまで、ロシアへの対応を強めれば、中国に接近させることになりかねないと危惧していたと指摘する。

「しかし、今やそうした考えは全く通用しない」と、ブラウン氏はAFPに語った。逆に、「日本はロシアに厳しく対応せざるを得なくなった。甘い対応だとそれが前例となり、中国に(ロシアと)同じことをしてもいいのだと思わせる余地を与えてしまいかねないからだ」と説明した。

さらに波紋を呼んでいるのが、安倍氏をはじめとする一部議員の間から「(米国の核兵器を受け入れ国が共同運用する)核共有」 をめぐる議論を進めるべきだとの声が上がり、自民党が検討に着手しようとしたことだ。

 少なくとも今のところは遠すぎる目標のようだが、広島と長崎に原爆を投下された被爆国でそうした議論を求める動きが出てきたこと自体、ウクライナ危機の影響力の大きさを示している。

https://www.afpbb.com/articles/-/3396210?act=all