九州と朝鮮半島を結ぶ「日韓海底トンネル」は1910年の日韓併合後から提唱されたが、1世紀たっても実現していない。
幻の計画と化してきたが、韓国の保守系野党が4月の釜山市長補選を前に、建設を検討すると気炎を上げた。
日韓関係が悪化した中、文在寅政権は否定的だが、全くの絵空事なのか。

◆日韓どちらに利益?で与野党対立
 「韓日海底トンネルを積極的に検討する。54兆ウォン(約5兆円)の経済効果、45万人の雇用誘発を期待できる」。
韓国の最大野党「国民の力」最高幹部の金鍾仁氏が2月上旬、市長補選を控えた釜山の視察に訪れ、
近郊の加徳島での新空港建設案とともに、トンネル構想に言及したことで新たな論争を呼んだ。

 与党「共に民主党」報道官は「韓日トンネルは、日本の利益がより多くなる“親日的”な議題。
日本が先に提案もしない未成熟な論点を、首長選を控えて突然持ち出したのは、無責任だ」と批判。
同党の洪翼杓政策委員会議長も「トンネルで私たちが得る利益は、日本に車で行くことしかない」などと皮肉った。


◆市長補選レベルでなく大統領選で
 こうした韓国与野党の応酬を、海底トンネルを長年推進してきた日韓の研究者は複雑な目で見つめる。

 韓国の釜山外国語大の徐義澤元総長は「トンネルは国家間の長期プロジェクトとして推進すべきだ。
与党が野党を親日と決め付けて攻撃するネタにするのは望ましくない」と語る。
大東文化大の永野慎一郎名誉教授も「国策で行うべき事業だ。本気なら、市長補選ではなく、大統領選公約とすべきだ」と主張。
構想の経緯やルート案(CG参照)、課題を説明した。

 永野氏が最適とみるルートは、佐賀県の唐津市から、長崎県離島部の壱岐、対馬を経て、韓国の巨済島などを通って、釜山に至るA案。
全長約250キロで、壱岐島や対馬で陸地を進むため、海底部分は150キロと見積もる。ほかに巨済を通らず釜山に直行するB案もある。
いずれも94年開通の英仏海峡トンネル(50キロ、海底部分38キロ)よりはるかに長い。最大水深は200メートル前後で、地盤も軟弱で難工事は必至だ。

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