『H・P・ラヴクラフトのポートレート』

 1937年3月15日は、寡作ながら独自の世界観の幻想ホラー文学『クトゥルフ神話』の作者としてカルト的人気を誇る小説家、
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが死亡した日である。

 生涯で発表した単行本は『インスマウスの影』だけであったH・P・ラヴクラフトだが、その死後、長年の文通仲間たちにより作品が再評価されると、
アメリカの文学史上、しかも幻想文学、ホラー文学の分野においては最も重要な作家のひとりであると考えられるようになった。

 だが、宝石商人として大成した父の元に生まれ、早くして神経症からの衰弱死で実父を亡くし、
自らも幼少期から同じ神経症に苛まれていたラヴクラフトの繊細すぎるその精神は評価を獲得するまで彼の命を支えることができなかった。

 神経症の症状は30歳頃からはだいぶよくなってきたが、
長年の文通仲間であったロバート・E・ハワード(小説『英雄コナン』シリーズ等の作者)が自殺したことに大きな衝撃を受けて衰弱してゆき、
翌年、腸ガンと栄養失調により死亡したラヴクラフト。

 ちなみに、ロバートの自殺は、結核で闘病中の母が昏睡状態に陥ったことが原因であった。

 見方によっては、文通仲間の母親の死がラヴクラフトの生命を奪ったとも考えられなくもなく、
H・P・ラヴクラフトの死はほんの些細な《死の連鎖》に拠るものであったともいえるだろう。




3月15日は『クトゥルフ神話』の作者H・P・ラヴクラフトが死亡した日!
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