中国国内では、米国との関係が急激に緊張する中で、
「金融戦争」の行き着く先としてドルを中心とする国際通貨システムから中国が締め出される恐れがあるとの不安が高まりつつある。
かつてはまさかと思われていた破局的な展開が、現実味を帯びてきたと受け止められている。

中国がドル決済の枠組みから遮断されたり、米政府が中国の膨大なドル建て資産の一部を凍結ないし差し押さえたりするような最悪シナリオが、
中国の当局者やエコノミストの間でここ数カ月、公然と論じられるという異例の光景が見られるようになった。

こうした懸念を背景に、中国製の新型コロナウイルスワクチンを輸出する際には人民元建て決済を採用する構想が浮上し、
デジタル人民元を使ってドル決済を迂回することも検討され始めている。

スタンダード・チャータード銀行(スタンチャート)の広域中華圏経済調査責任者で、
中国人民銀行(中央銀行)エコノミストだったシュアン・ディン氏は
「人民元の国際化は以前なら『あれば好都合』だったが、もはや必要不可欠になろうとしている」と語り、
米中間の金融デカップリング(分断)の脅威は「明白かつ今そこにある」と指摘した。

経済規模で世界第1位の米国と第2位の中国が完全にたもとを分かつ事態が起きる公算は乏しいとはいえ、
トランプ政権は貿易やハイテク、金融業務などに絡む重要分野で部分的なデカップリングを推進し続けている。
その一環として、米国の会計基準を満たさない中国企業の上場を禁止する提案や、
動画投稿のTikTok(ティックトック)やメッセージを交換する微信(ウィーチャット)といった中国のアプリ使用禁止の方針などを打ち出した。
11月3日の米大統領選に向け、両国の関係はさらに緊迫化する見通しだ。







焦点:「鉄のカーテン」再びか、ドル圏から締め出し恐れる中国
https://jp.reuters.com/article/china-us-financial-idJPKCN25A0O9