しかし、こうした上医師の反論に対し、データやグラフの扱いについて厳密な公衆衛生や疫学の専門家は厳しい見方を示している。
名古屋市立大学公衆衛生学教授で疫学者の鈴木貞夫さんはBuzzFeed Newsの取材を受け、同様のデータを元に、上記のグラフ(図1)を作成。そのうえで、こう語った。
「最も重要なのは軸をそろえることです。同じものを見ているわけだから、2軸にするにはよほどの理由がなければなりませんし、(今回の場合は)よほどの理由はありません。また、毎日の報告のデータではなく、移動平均を取るべきです。特にフランスは変動が大きすぎて、本質が見えなくなっています」
「私のグラフを見てわかる通り、このグラフからなにか『日本だけが』というものを見つけ出すのは困難でしょう。図1を見て『これは2軸にした方が適切だ』と考える人はいないと思います」
また、上医師の「真夏の北半球でコロナが急増している先進国は、トランプを支持する米国の一部と日本くらいです」という点については、以下のような見解を示した。
「移動平均をとるとフランスも上昇傾向にありますし、そもそもこの6か国の選択肢の中に(再び新規感染者数が急増している)スペインが入っていないということにも、何か理由があるのでしょうか」
鈴木さんがここで示したのは、ほかの国の推移を示した以下のグラフ(図2)だ。
「真夏の北半球、先進国という限定も特に意味があるとは思えず、単にインドやオーストラリアを除きたかったからとしか思えません。 今後はともかくとして、現状は『日本だけ何か大変なことが起きている』わけではないのです」
また、上医師の「縦軸が圧縮しようがされまいが、増えているか減っているかは比べられる」という主張についてはこう言及した。
「正誤だけから言えば正しいと思います。しかし、それはこの(上医師の)グラフが適切であることを意味しませんし、データの見せ方に対して誠実な物言いではありません。疑義に対してこのような答え方をする人を私は信用することはできません」
「増えているか減っているかが見たければ日本だけ見せればそれは明らかですし、他の国を描くということは『比較』になりますから、条件をそろえるということは『疫学では当たり前』のことです。上先生の専門はおそらく疫学ではないので,疫学の専門家に相談するべきでした」
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