政府は19日、民間企業や官民の取引の契約書で押印は必ずしも必要ないとの見解を初めて示した。
押印でなくてもメールの履歴などで契約を証明できると周知する。
押印のための出社や対面で作業を減らし、テレワークを推進する狙いがある。

内閣府、法務省、経済産業省は同日、連名で押印に関する法解釈についてQ&A形式の文書を公表した。
契約書に押印しなくても法律違反にならないかや民事訴訟法上のルールを明確にした。

文書は「特段の定めがある場合を除き、押印しなくても契約の効力に影響は生じない」と記した。

契約が成立したと証明するにはメールの本文や送受信履歴、契約の当事者を本人確認できる身分証明書の保存などが押印の代用手段になるとの見解を示した。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府は民間企業にテレワークを推進し、出勤する人の削減を要請してきた。
民間企業からは「押印のため出社しなければならない」などとの指摘が出た。

政府の規制改革推進会議は5月、契約で不必要な押印を削減するため、指針の作成を提言した。
今回、政府は初めて見解を示した。

民事訴訟法は契約書など文書が正しく成立したことを推定する手段に本人や代理人の署名や押印を挙げる。
訴訟リスクを避けるため、過剰に押印を求める慣行があった。
実際は押印以外も裁判所の判断材料になるため、押印は必須ではないと強調した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60536320Z10C20A6EAF000/