江戸時代の反射望遠鏡 鏡の精度は現代レベル

今からおよそ180年前の江戸時代に製作された反射望遠鏡の鏡の精度を調べたところ、現代の市販の鏡とほぼ同じレベルで作られていたことを示すデータが得られました。
調査にあたった専門家は「計測機器のない時代にこれだけ精度の高い鏡を製作できるのは非常に驚きだ」と指摘しています。
この望遠鏡は、江戸時代後期に日本で初めて反射望遠鏡を完成させて天体観測を行った国友一貫斎が作った1台で、天保7年=西暦1836年と記されています。
望遠鏡を所蔵する滋賀県長浜市などが、光を集めて像をつくる「主鏡」を取り外して東京・三鷹の国立天文台に持ち込み、
鏡面の全体の形状と表面の細かな起伏をなくしていく磨きの精度について、現在市販されている2種類の鏡と比較しました。
その結果、形状の精度を示す数値は2種類の鏡の中間となり、今の市販品とほぼ同じレベルという結果が出ました。
一方、磨きの精度を示す数値は、研磨技術の差や経年劣化が影響して、市販品にはおよびませんでした。
計測を行った国立天文台の都築俊宏さんは、「結果に非常にびっくりしました。現代は加工をする際に計測機器があるので、計測しながら修正することができます。
その手段がないなかでこれだけの精度の鏡を作れるというのは、よほどの職人技と情熱があったのではと感じました」と話しています。

国友一貫斎は、江戸時代後期の安永7年=西暦1778年に現在の滋賀県長浜市にあった鉄砲鍛冶の家に生まれました。
職人として若いうちから才能を見せ、鉄砲以外にも、空気銃や照明器具、現在の万年筆にあたる携帯用の筆などを作ってきました。
そうしたなかで最も有名なのが、日本初の「反射望遠鏡」です。
江戸で外国製の望遠鏡を見たことをきっかけに製作に取り組み、試行錯誤を繰り返しながら50代の半ばで最初の1台を完成させました。
一貫斎が作った望遠鏡は現在、4台が残されていて、今回調査したのはこのうち2番目に古いものです。

一貫斎の望遠鏡の研究を続けてきた京都大学大学院の冨田良雄元助教によりますと、鏡として使われている金属は銅とすずを混ぜた青銅で、完成から180年近くたった今でも、曇りが全くないということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191118/k10012181061000.html