「アニメ業界で働く人間は、みんなアニメや映画が好き。
残業代が出なくても魅力的だと思う瞬間もあるけれど、それでは『やりがい搾取』になってしまう。
魅力的な仕事であることで(残業代未払いを)ごまかされてはいけないなと感じます」(Aさん)

残業代と付加金など合計約535万円の支払いを求めて

 劇場版アニメ『海獣の子供』などの作品で知られるアニメ制作会社「STUDIO4℃」(正式名称は株式会社スタジオよんどしい)で
残業代の未払いがあったとして、同社で制作進行を担当する男性社員・Aさん(25歳)が
残業代と付加金など合計約535万円の支払いを求めて10月10日付で東京地裁に提訴した。
Aさん、Aさんが加入する労働組合「ブラック企業ユニオン」、代理人弁護士が10月18日の記者会見で明らかにした。

「STUDIO4℃」はスタジオジブリ出身の田中栄子氏が代表を務め、世界的にも評価が高い作品を世に出してきた。

 2016年4月に「STUDIO4℃」に入社したAさんは、制作進行を担当した。
制作進行の業務とは、端的に言えばアニメーション制作の工程管理。
TVアニメであれば1話数ごと、劇場用長編映画であればパートや工程ごとを担当して、スケジュール、スタッフ、素材などの管理を行う。
2014年から2015年にかけて放送されたアニメ『SHIROBAKO』では、主人公の宮森あおいが制作進行を担当していた。

 同社で働くようになった動機について、Aさんは「高校生のころから映画がすごく好きだったんです。
大学でも映像学部で学びました。映像作品を作りたいという思いでした」と明かす。



1年前の日付が記された労働条件通知書を出してきた

『海獣の子供』では動画の制作進行を担当したAさんは、映画完成の直前、
2019年3月には月103時間の時間外労働をしたものの、残業代が支払われることはなかった。
会社側は、「専門業務型裁量労働制に当たるため」と説明している。



「明日、隣の人が死ぬんじゃないか」  アニメ『海獣の子供』めぐって制作会社社員が“残業代未払い“で提訴
https://bunshun.jp/articles/-/14852