中国の科学論文シェア急上昇 米国と「2強」に 日本は急落、3位が2領域だけ

2015〜17年の質の高い科学論文の国別シェアで、中国が理工系の151研究領域のうち71領域で首位を
占めていることが、国立研究開発法人「科学技術振興機構」(JST)の分析で分かった。残りの80領域は
米国が首位で、最先端の科学研究で米中両国の2強体制が鮮明になった。一方、日本は上位5位以内の
研究領域の数が約20年前に比べ激減しており、相対的に研究力が低下している現状が浮き彫りになった。

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論文は他の論文に引用される回数が多いほど注目度が高く、優れているとされる。JSTはオランダの学術出版
大手エルゼビアの論文データベースを使い、引用回数が3年間の平均で上位10%に入る論文群を分析。
対象は臨床医学を除く理工系の151領域で、内訳は、生命科学(領域数46)▽工学・化学・材料(同39)
▽コンピューター科学・数学(同26)▽物理・エネルギー・環境(同40)。

中国が首位なのは、工学や材料科学、計算機科学の基礎となる数学などの分野に多かった。中国は
約20年前(1995〜97年)には上位5位以内に入るのは2領域のみだったが、約10年前(2005〜07年)は
103に急増、最近(15〜17年)は146とほぼ全領域を占めるまでになった。

米国は中国に抜かれた領域も多い半面、生命科学分野の大半などで首位を堅持。約20年前から一貫して
全領域で上位5位以内に入っており、トップレベルの研究力を維持している。

一方、日本は約20年前は83領域で5位以内だったが、最近は18領域に減少。「がん研究」と洗剤や医薬品などに
幅広く応用される「コロイド・表面化学」の3位が最高だった。従来、日本が強いとされてきた化学や材料科学でも
徐々に上位論文の割合が減少していた。

JSTの伊藤裕子特任研究員は「2領域での3位が最高という日本の現状には驚いた。質の高い論文の本数が
この20年で世界的に増加する中で、日本の研究力が世界の伸びに追いついていない可能性もある」と指摘する。

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