【北京=西見由章】中国初の国産空母など海軍艦艇の建造を担う大手国有企業「中国船舶重工集団」の孫波社長が「重大な規律違反と違法行為」の疑いで拘束され、波紋が広がっている。

初の試験航海を行った国産空母の不具合が原因との臆測が出ているほか、米国に空母の機密情報を売り渡した「スパイ容疑」を指摘する報道まで飛び出した。

違法行為の内容は公表されていないが、今回のスキャンダルは習近平国家主席が進める「強軍」建設と海洋進出路線に大きな影を落としそうだ。

中国共産党中央規律検査委員会と国家監察委員会は今月16日、孫氏への調査を発表した。
5月に実施された国産空母の試験航海が何度か延長され、また航海終了直後に遼寧省大連の造船所で改修工事が始まったことなどから、空母の欠陥と孫氏の調査を関連付ける見方も出ている。

こうした声を打ち消すかのように共産党機関紙、人民日報系の環球時報は22日付で「国産空母は試験航海に成功した」とする同集団会長の談話を掲載。
海軍への引き渡しと就役が今年末に早まるとの専門家の見通しも伝えた。

また同集団は20日、通信アプリを通じて、上海で建造している2隻目の国産空母とみられる完成予想図が写り込んだ写真をアップし、中国メディアが大きく報じた。
いずれも、孫氏拘束が中国の空母戦略に影響を与えないことを印象付けようとする動きだ。

一方、ロシア政府系メディア「スプートニク」や香港に拠点を置くニュースサイト「アジア・タイムズ」などは、孫氏のスパイ疑惑を報じた。
旧ソ連の「ワリヤーグ」を改修した中国初の空母「遼寧」の設計情報などを、米中央情報局(CIA)に売り渡したとしている。

https://www.sankei.com/smp/world/news/180622/wor1806220025-s1.html
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