http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018050902000078.html

名古屋城新天守にエレベーターなし 市方針、昇降新技術探る
 名古屋市は、二〇二二年末に完成予定の名古屋城の木造天守にエレベーターを設置しない方針を固めた。 エレベーター以外で高齢者や障害者が昇降できる新技術などを導入して「バリアフリー化」したい考えだが、方針には賛否の声が上がった。
市は九日、木造天守復元について議論する有識者会議で正式に方針を示す。

 車いすを使用する愛知県重度障害者団体連絡協議会の近藤佑次さん(32)=名古屋市緑区=は「納得いかないし、残念だ。公共事業は弱い立場の人に配慮し、誰も排除しないようにすべきだ」と憤った。

 四月に開かれたバリアフリー対策の有識者会議にオブザーバー参加するなどしエレベーター設置を求めてきただけに落胆は大きい。市が掲げる新技術にも「本当にできるのか」と疑問を呈した。

 「素晴らしい」と市の方針を評価するのは「名古屋城天守閣を木造復元し、旧町名を復活する会」会長の北見昌朗さん(59)=同市西区。
先月、河村たかし市長にエレベーターを設置しないよう要望しており、「批判は受けるかもしれないが、百年後に評価されるだろう」と歓迎した。ただ「誰もが登れるようにするのは当然のこと」とも話し、障害者や高齢者も天守に登れるようにする新技術開発の必要性を強調した。

 市は昨年十一月、エレベーターを設置しない案を一度は示したが、障害者団体などの反発を受け、あらためて検討。
(1)エレベーターを設置しない(2)十一人乗りを城の外部の地上から一階に設置する(3)柱や梁(はり)を傷めない四人乗りを内部の地下一階から三階に設置する−の三案に絞った。

 しかし、外部設置案は景観を損なう恐れがあり、内部設置案も四人乗りは幅八十センチ、奥行き百センチと小さく、電動車いすが利用できないことから、設置しない案が妥当と結論付けた。

 その代わり、エレベーター以外で昇降できるロボットなどの新技術開発の提案を国内外から募るほか、天守からの眺望を体感できる仮想現実(VR)技術を活用した施設を設ける方針。介助要員や補助具の配置も検討する。

 七日から入場禁止となった現在の天守は、外部に地上から一階の十一人乗り一基、内部に地下一階から五階の二十三人乗り二基のエレベーターを設置。五階から展望室がある最上階の七階までは階段しかない。

 市の計画では、二〇一九年九月から現天守を解体し、二〇年六月に木造天守復元に着工する。総事業費は最大五百五億円。