10/25(月) 17:06
Number Web

「スケボー禁止!」「スケボー禁止!」14歳と19歳のスケボー女王を取材して痛感した《日本ではスケボーをやる場所がない》問題
今回取材した西矢椛14歳。松原中在学中。日本人女性として初の21世紀生まれの五輪金メダリストに。取材は大阪府松原市にあるスポーツパークまつばらで行った photograph by Atsushi Kondo

 Number最新号「新しい金メダリストのつくり方」では、堀米雄斗を筆頭に東京五輪で金メダルを獲得したスケートボーダーたちを大特集。パークとストリートの種目で初代女王に輝いた四十住さくらと西矢椛をインタビューし、彼女たちにゆかりあるスケートパークを取材したフォトグラファーの近藤篤氏が実感した、国内のリアルなスケボー事情とは? 

 2016年の8月、ブラジルのリオデジャネイロで開かれたIOC総会で、新たなオリンピック競技の一つとして、スケートボードが承認されたというニュースが流れた。

 スケボーがオリンピック? 

 満場一致で下されたその決定に、首を捻った人、違和感を覚えた人は多かった(と思う)。

 かくいう僕もその一人だった。

 別にスケボーを子供の遊びだと思ってはいなかったし、他のスポーツと比べて下に見ていたわけでもない。公園や歩道で夜遅くまで滑り倒すスケーターたちに敵愾心を抱いたこともない(若者に偉そうに言えるほどちゃんとルールを守って生きてきたわけじゃないから)。

 でも、スケボーとオリンピックという組み合わせはなんだかしっくりこなかった。

 陸上だってある、体操だってある、サッカーだって、アーチェリーだって重量挙げだってある、なのになんで今更スケボーが必要なんだろう? 

 今になって考えてみると、たぶんあの違和感の理由は、ただ単に競技スポーツとしてのスケボーが僕にとっては新しすぎたことだった(もちろんIOCには別の事情もあったのだろうけれど)。

 歳をとればとるほど、新しいものをさらりと受け入れるのは難しくなってゆく。

 例えば2008年の夏、iPhoneという革新的なデバイスを手にした大人たちの多くは「こんなの特に必要ないよね」とクールに呟いていた。そして2021年の今、もうiPhoneなしでは生きられない人が世界中にごまんといる。

 きっとスケボーも同じようなものなのだろう。

 1940年代のアメリカで生まれたこの横乗り系スポーツは、大きく動き始めた新しい時代の中で、いつの間にか当たり前のものとして受け入れられてゆくのだと思う。

さくらともみじを巡る2泊3日の旅

 そんなことを考えながら、2021年の10月上旬、二人の金メダリスト、四十住さくらと西矢椛が育った場所を、本人たちへのインタビューも兼ねて2泊3日で回ってきた(さくらともみじを巡る2泊3日の旅、なんだか園芸雑誌の取材みたいである)。

 あらかじめ組まれた取材スケジュールには、彼女たちへのインタビューも入っていた。19歳と14歳、二人の年齢を足しても僕よりまだ20歳以上年下である。3歳児と猫の心を開くのはけっこう得意だけれど、思春期の女の子は難しい。インタビュー云々の前に、そもそも彼女たちとの会話そのものが成立するのだろうか? (まあ、なんとか成立した)

 訪れた場所は、四十住さくらの地元である和歌山県岩出市、西矢椛の地元である大阪府松原市、それから二人のスケーターにゆかりのある大阪府堺市と兵庫県神戸市の4カ所だ。

 岩出? そもそも名前すら知らないし、もちろん和歌山県内のどのへんに位置するのかもわからない。

 松原? 名前は聞いたことがあるけれど、こちらも具体的な位置はわからない(30年くらい前にバリ島で知り合った女の子がたしか松原の出身だった)。

 そして堺。堺といえば仁徳天皇陵、あるいは千利休が思い浮かぶ。でも今回は古墳の発掘調査に来たわけでもなく、侘び茶のお稽古に来たわけでもない。あくまでも目的はスケボーである。

 ちょっと寄り道して日本最大の前方後円墳を見学したかったけれど、堺市出身の同行編集者Pくんいわく、あんなもん横から見たらただのデカい林っすわ、と一言で却下された。

 その堺で足を運んだのは、市の東部に位置する大泉緑地、そしてそこから南西に6キロほど下ったところにある原池公園である。

https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20211025-00850338-number-000-2-view.jpg
https://news.yahoo.co.jp/articles/540f73ddc9a821e2ed26e336c6874620c43ae82b