イラクの女優ネスマさんは、この後恐ろしい出来事が待っているとは、知る由もなかった。

 難民の家族に支援物資を届ける企画だと言われたネスマさん。だがそこに銃や爆発物を持った過激派が襲撃――。

 実はこれ、すべてドッキリ企画だった。

 そうとは知らずネスマさんは目隠しされ、偽物の自爆ベルトを巻き付けられると気を失ってしまった。

 その後ネスマさんは、軍服姿の男に「救出」される。だが、この男性こそ番組の司会者、ハダッドさんだった。

 このドッキリを放送したところ、番組をボイコットするよう呼び掛けるハシュタグがSNS上に広がった。同様のドッキリ企画は25本収録されたという。

 司会者のハダッドさんが自宅で取材に応じ、自らの考えを明らかにした。

 テレビ番組の司会者 ハダッドさん
 「(偽物の)IS戦闘員がやってきて目隠しされたゲストは、恐怖を感じた。そのことによって彼女も視聴者も、それがどれだけ恐ろしい体験か感じたのだ。それが分からない人も一部にいるが」

 ネスマさんは企画について知らされていなかったと述べた。ニセの戦闘員は、目隠しされたネスマさんの隣で銃を発砲した。すると、ネスマさんは亡くなったきょうだいの名を叫び「いまから私も行くわ」と言った。ネスマさんのドッキリは、ユーチューブで100万回以上再生された。

 だが作家で活動家のマリキさんは、過激派による事件に苦しむイラクで、こうした番組が引き起こす影響を心配すると話す。

 作家 レスリ・アル・マリキさん
 「社会における暴力は、このような行為から生まれている。つまり暴力的な社会は、暴力的なメディアによって作られる。

 このような番組がいったい何をもたらすというのだろうか。ハシュタグがついて、人々から怒りと暴力的な反応が返ってきた。

 確かに再生回数は多いかもしれないが、それは単なる好奇心であり、普通のことだ。人々は騒ぎの中身を知りたいだけだ」

 大勢のイラク人が、ISとの戦いの後遺症にいまだ苦しむ中、こうした番組が放送されたことに批判的な意見がツイッターに寄せられている。

 ハダッドさんは治安部隊を称賛し、ISとの戦いにおける彼らの犠牲を伝えることが番組の目的だったと話す。だが番組は、治安部隊のみならず一般のイラク人をも侮辱しているとの批判も聞かれる。

 ドッキリの種明かしが終わると、ネスマさんは笑顔を見せた。ネスマさんは、番組はイラク人が体験してきたことを表しており、出演できたことを誇りに思うと語った。

*字幕を一部修正して再送します。

ソース ロイター 動画ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/c77dc772c470a2d6edfde0ec2781454411e697cf