「ロンバケ」のようなドラマは二度と作れない訳
2021年1月18日 11時0分
東洋経済オンライン
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/19550936/


今やテレビは4K・8Kの超高画質化、携帯電話も5Gという超高速化・大容量の時代への転換期を迎えています。

もはや「IT革命」なんて言葉も死語になりつつあるほど、情報通信技術そのものが超高速で進化しているわけです。

そんな時代の急速な流れに、世相を映す鏡でもある“テレビドラマ”は、どのように対応してきたのか?……というのが今回のテーマです。21世紀に入ってちょうど20年となる今だからこそ、その進化の歴史を振り返ってみたいと思います。

■日本最初の携帯電話はなんと「重さ3kg」

(中略)
     
1992年頃から女子高生を中心に、ポケベルを使った数字の語呂合わせのメッセージを送り合うことが流行しました。ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』(1993年/日本テレビ系/企画原案は秋元康)に代表されるように、ドラマ内の通信情報ツールとしてしばしば登場してくるようになりますが、その全盛期は長いものではありませんでした。

ですが、時代が1990年代半ばに突入しても、まだドラマの中の主な情報通信ツールが携帯電話とはなりません。1996年4月スタート、いまやドラマ史に残る名作の一つとも言える『ロングバケーション』(フジテレビ系)では、葉山南(山口智子)も瀬名秀俊(木村拓哉)も奥沢涼子(松たか子)も携帯電話を持っていませんでした。

■『ロンバケ』のようなドラマは再現不可能

それどころか、葉山と瀬名が出会ったキッカケは携帯電話が普及していなかった時代だからこそ実現できたもの。

葉山は結婚式当日に彼女を捨てた婚約者とルームシェアしていた瀬名のマンションに押し掛け同居。その理由は婚約者からルームメイトの瀬名に電話がかかってくるかもしれないからというもの……現在では、もはや無理めな設定でしょう。

総務省の統計によると、1995年末時点での携帯電話(PHS含む)普及率は9.6%。10人中9人は携帯電話を所有していなかったワケで、『ロンバケ』製作時の、1996年春頃には、違和感のない設定でした。

また、瀬名は秘かに奥沢に心を寄せていますが、突発的かつ些細な出来事によって2人は何度かスレ違うことがありました。5年後にこの『ロンバケ』が地上波で再放送されたとき、当時の高校生から「どうしてキムタクは、松たか子の携帯に電話をしないのか?」という疑問の投書が新聞社に寄せられたそうです。

『ロンバケ』から5年後の2001年時点での携帯電話普及率は、60.3%。もう携帯電話が一般化していたのですから、高校生が疑問に持つのも無理もないことです。

爆発的な普及率アップに呼応するように、1997年頃からドラマにも登場するようになっていった携帯電話。それと並行して存在感を増していったのが、「メール」です。パソコンへの間違いメールが元で、恋が始まる『WITH LOVE』(フジテレビ系)が登場したのが、1998年。

■携帯電話の浸透がうかがえる『涙をふいて』

そして、この2年後の『涙をふいて』(2000年/フジテレビ系/上戸彩のデビュー作)では、メールや携帯電話を巡る状況がさらに進んでいることがわかります。

この作品は、火事で父(木村恵吾)を亡くし、母(岡田奈々)が意識不明の重体になってしまった4人兄妹を引き取った大西勝男(江口洋介)の物語。その4人兄妹の長男・渕上健太(二宮和也)は、使っている形跡のない携帯電話をずっと大切に持っていました。

その理由は、生死をさまよっている母からの、最後になるかもしれないメールが残されているからです。一般的に普及してから3年ほどの時期ですが、既にメールや携帯電話の浸透ぶりがうかがえます。

(以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)