12/6(日) 9:00
スポーツ報知
劇団四季、１１０３公演中止、売り上げ８５億円消滅も「演劇はしぶとい芸術」吉田智誉樹社長インタビュー
演劇への思いを語る劇団四季の吉田智誉樹社長
新型コロナ禍で演劇界は苦境に立たされた。劇団四季の公演中止は１１０３回。失われた観客９９万人。消滅した売り上げ８５億円。それでも劇団四季は１０月２４日、東京・竹芝に新劇場「ＪＲ東日本劇場〔秋〕」を誕生させた。今、新たに劇場の幕を開けるという決断を下した吉田智誉樹社長（５６）はインタビューで「これほど『演劇というものはどんな芸術なんだ？』と考え続けた日々はない」と話す。（瀬戸 花音）
怪人の歌声が真新しい劇場に響き、万雷の拍手は奪われた歓声の分だけ大きくなった。吉田氏は「万感迫るものがありましたね。やっぱり演劇はこうでなきゃ」と振り返る。
新型コロナ禍の１０月２４日、東京・竹芝に誕生した新劇場「ＪＲ東日本劇場〔秋〕」で、３か月遅れでのこけら落とし公演「オペラ座の怪人」が行われた。
新型コロナの感染が拡大した２月末から７月半ばまで劇団四季は１１０３回の公演を中止。８５億円の売り上げが消滅した。４月頭から５月末までの２か月間、俳優たちは完全な自宅待機を余儀なくされた。「彼らが一番つらかったと思います。先が見えないのはどれだけ不安だったか」
公演再開後、「ライオンキング」で客席を通る動物たちは歌うのをやめ、「キャッツ」の猫たちは観客にじゃれつかなくなった。出演者が入るエリアは完全に隔離され、俳優には食事はひとりで取るよう呼びかけられた。演出を変え、対策を講じても新型コロナは容赦なく劇場を襲う。劇団四季では１０月、「アラジン」の公演で出演者とスタッフに陽性者が出た。「これほど『演劇というものはどんな芸術なんだ？』と考え続けた日々はない」。劇団四季に身を置いて３０年以上の吉田氏に突きつけられた現実だった。
それでも、「演劇にはニューノーマルなものはない」という。演劇の感動の源は、人が同じ場所に集まる同時性と、同じことが二度と繰り返されない一回性にある。その魅力を感染のリスクなしで代替できるものは今のところない。「リスクのあることをやりながら劇場に人を集めることをしていかないといけない」。そんな今だから、全国の舞台人に対して同志という思いが芽生える。「みんな一緒に戦ってると思います。宝塚の人も、小劇場の人も。思ってくれてるんじゃないかな。共にやり続けなければいけないってことを」
「演劇は生きるか死ぬかこの二択の中に立たされている」。新劇場でのあいさつで吉田氏はハムレットを引き合いに出し、現状をそう表現した。「演劇はしぶとい芸術だと思います。私はこれを信じたい」。決してその灯は消さない。劇団四季のステージは今日も幕を開ける。
◆劇団四季の主な感染対策
▼検温など 劇場入り口での検温、手指消毒の徹底
▼客席の飛沫（ひまつ）防止 可視化実験をもとに俳優の飛沫が飛ぶことが予測される前列の席を販売していない
▼エリアの分離 観客と接するスタッフが行き来するエリアから舞台に出演する者だけがいるエリアに行くことを越境と呼び、越境をする際は手指消毒、足の裏の消毒、場合によっては靴の履き替えなども行う
▼接触機会削減 俳優陣の他カンパニーとの接触機会を減らす
◆吉田 智誉樹（よしだ・ちよき）１９６４年６月８日、神奈川・横浜市生まれ。５６歳。慶大文学部卒。８７年、四季株式会社（劇団四季）に入社。広報営業関連セクションを担当。２００２年制作部広宣・ネットグループ長、０４年執行役員広宣部長、０８年取締役広報宣伝担当を経て、１４年に浅利慶太氏（１８年死去）から引き継ぎ、社長に。趣味は野球観戦。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/b4e532d9fa38e955f39c64af9411723f3370009e
