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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒットとアメリカの大統領選に挟み撃ちにされ、あまり注目されなかった今年の第33回東京国際映画祭。それでもTIFFという称号で親しまれているこのフィルム・フェスティバルは国内最大規模を誇る。TIFFの期間は『鬼滅の刃』がたたごとではない高収益を叩き出した10月31日から、アメリカ民主党のジョー・バイデンの勝利が確定した11月3日まで。タイミング的にはめでたいながらこの期間中、日本を含め世界中でコロナ感染者が激増。映画祭どころではなかったかもしれない状況下で観客を入れて行われたこと自体、拍手を送りたい。上映作品は138本。観客動員数は40,500人。去年のTIFFに比べると4割近くの減少ではあるがパンデミック下のイベントとしては優秀だ。

しかし今年のTIFFの最大の功績は別にある。期間中、外国プレスの間で囁かれていた「ハリウッド抜きのエンタメ界ってありかもね」という、うっすらとした、しかし決して払拭できないウキウキ感だ。TIFF最終日には「ハリウッド作品などなくてもノープロブレム」という、希望に満ちた題の記事がNikkei Asia Reviewから餞別のように出版された。その内容を少し紹介すると:「元々日本の映画産業は洋画よりも邦画の公開本数が多い。国産映画の地盤は固いし、『鬼滅の刃』などの作品には映画館需要を牽引していく体力が充分ある。」といったものだった。

確かに、ハリウッド映画は昔から話題作りには大きく貢献してきたがいざ劇場で見るとなると日本映画を選ぶ観客は多い。だからこそ日本の映画産業はコアが強く、景気に左右されないと言われてきた。ちなみに2019年度の映画興行収入は過去20年間で最高額の2611億円8000万円。前年比の117.4%だ。そのうち、邦画は1421億円の収益をあげた。

作品別に見ると1位は『天気の子』で140億6000万円。2位の『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』を含め、上位5本のうち4本がアニメ作品だった。(ちなみに映画『キングダム』が唯一トップ5入りした実写作品である。)日本人のアニメ好きもさることながらビッグ・スクリーンでアニメを楽しみたい日本人の多さに驚く。アニメ映画制作のインフラの充実と豊富な人材に裏打ちされたこの図式は、今後も変わることはないだろう。

前述のNikkei Asia Reviewの記事中で、東宝シネマの国際担当常務である松岡宏泰氏が「日本人は春のステイホーム期間中にまとめてアニメを見た人が多く、その面白さを再発見したのではないか。」と語っていた。いやいや、再発見どころか夢中で入れ込んでいる、といった方が良いかもしれない。『鬼滅の刃』のメガ人気のもと、40代から50代のいい大人が嬉々として『週刊少年ジャンプ』を読み、グッズを買い漁り、何度も劇場に足を運んだりしているのだ。

ジャパニーズアニメありきの日本映画産業はパンデミック下でその本領を発揮した。松岡氏も「我々はパンデミックにより、だいぶダメージを受けたが死んではいない」といった意味のことを語っていた。

死んでいないどころか東宝の経営は堅調そのものだ。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開以前から、夏に出た『今日から俺は!!劇場版』と8月公開の『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が共に大ヒットしたので、東宝は大型ハリウッド作品をアメリカに先んじてアジアで公開することを打診していたほどの余裕があったのだ。(残念ながらハリウッド側の答えは「ノー」だったが。)
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