1/1(水) 17:00配信 朝日新聞デジタル
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 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が元日のニューイヤーコンサートで演奏するヨハン・シュトラウス1世作の「ラデツキー行進曲」の楽譜が、今年から一新される。アンコールの最後での手拍子は毎年の恒例となっており、クラシックファンにはおなじみの曲だ。楽譜の一新には、ナチスが絡む歴史との決別の意味が込められている。

 これまで使われてきた楽譜は、オーストリア出身の作曲家レオポルト・ベーニンガー(1879〜1940)の編曲による1914年版。ベーニンガーは32年、隣国ドイツで台頭していたナチスに入党し、党の文化・音楽活動に協力したことで知られる。

 楽団長でバイオリニストのダニエル・フロシャウアーさんによると、「ベーニンガーの楽譜を今も使っているのか」という質問を受けることがあるといい、対応を考えるために、楽団が楽譜や記録を詳しく調べてきたという。

 その結果、楽譜は戦後になってパートごとに手書きで書き加えられており、打楽器パートがかつてのシュトラウス楽団が演奏した通りになっていたり、いくつかの楽器が演奏されていなかったりすることがわかった。現在演奏されている音楽はベーニンガーのものではなくなり、時を経てウィーン・フィルの音として完成されていた。

 そのため、楽団内で話し合い、過去に書き加えられた内容を反映して楽譜を一新することを決めたという。フロシャウアーさんは「ベーニンガーの名前を除くことが重要だった」と語る。ドイツなど欧州では「非ナチ化」として話題になった。楽譜が一新されても、演奏される曲の聞こえ方に大きな変化はないという。