パ・リーグを連覇した西武は、クライマックスシリーズ(CS)でソフトバンクに4連敗を喫し、昨年に続いて今年も日本シリーズに進出することができなかった。
2018年に現行のCSとなって以降、西武は8回も出場しているが、日本シリーズに進んだのは日本一となった08年の一度しかない。
なぜ、西武は“短期決戦”を勝ち抜けないのか。現役時代、CSを含めて何度も対戦経験がある、元ロッテで野球評論家の里崎智也氏にその理由を聞いた。

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里崎氏は、西武のリーグ連覇について「攻撃こそ最大の防御。打ち勝って連覇するのは難しい。
大技から小技までほぼ完璧な攻撃でそれを成し遂げた」と語っていたが、やはり短期決戦は、レギュラーシーズンとは異なると指摘する。

「勝つこと、負けること、両方ある。もちろん選手にも調子の波がある。それを少なくするのが大事だが、仕方がない。
長いレギュラーシーズンでは、リカバリーができる時間が残されているが、短期決戦はそれができない。
西武の場合、レギュラーが固定していて、バックアップ(の選手)とは少し差がある。
主力選手の調子が上がらなかった時、その代わりをつとめる選手が出てこなかった。(CSでは)1試合平均で3点以上は得点しているが、失点の多さを考えれば、それでは得点が足りない。
シーズン中からそうだったが、(西武はもっと)打たないと勝てない」

西武の打線は、「山賊打線」と評されるように、得点力が魅力で、それを支えるのは長打力である。
しかし、CS4試合をみると、ホームランは山川穂高の1本のみ。森友哉、中村剛也といった主砲がマークされると、得点力は当然下がってしまう。
さらに、短期決戦に臨む際には、調子の波を合わせることが重要だといわれるが、西武は、2年続けてCSに向けた調整に失敗したということか。

「これが一番難しいことで、どのチームにもあり得る。ソフトバンクも決して主力選手の調子が良いわけではなかったが、それを豊富な選手層で補った。
もし西武の主力の調子が良ければ、逆の結果も考えられた」

レギュラーシーズンを制し、そして短期決戦を勝ち抜いて日本一を目指すには、ソフトバンクや巨人のような“巨大戦力”がなければダメなのだろうか。

「もちろん選手層が厚いに越したことはない。しかし、西武・辻発彦監督はやれることを全部やっていた。では、『今年の西武で森に代えて誰を出しますか?』という話です。
シーズン同様、主軸を使って、その選手が結果を出すほかない。これは昔の森祇晶監督時代から何も変わっていない。(森元監督も)短期決戦に不調でも中心選手は代えなかった」

 チームの中心選手は外せないー。かつて80〜90年代にかけて、9年間で8度のリーグ優勝、6度の日本一という黄金時代を築いた森西武には、秋山幸二、
清原和博、石毛宏典といった代わりがきかない主軸がいた。今年の西武も、その“伝統”を受け継いでいたということか。

「西武は本当によくやっている。毎年のようにFAなどで選手が出ていく中、いい成績を出している。関係者もファンも胸を張れるものです」

里崎氏は、現状の戦い方を評価したうえで、さらなる提言をしてくれた。

「やっぱり野球は“個”です。“個”がそれぞれ結果を残さないといけない。“個”が思ったように動けるから、監督も采配をすることができる。
最後は個人がそれぞれの状況を打破するしかない。今の制度では、パ・リーグでは(西武に比べて資金力が豊富にある)
ソフトバンクなどに戦力が集まりやすいが、そのなかで、ぜひ西武には結果を出してほしい」

 リーグ優勝を果たしても、日本シリーズで戦えない……毎年のようにCS制度には賛否両論がある。
だが、ルールとして定まっている限り、これを勝ち上がらなければ日本一にはなれない。
そのためには、西武は個々の力で打ち破るしかない。里崎氏同様、見ている側もそれを望んでいる。

https://news.livedoor.com/article/detail/17234022
2019年10月15日 11時0分 デイリー新潮