アニメーション作品の主題歌を数多く担当し、アニソンシンガーの第一人者である堀江美都子が、平成時代に歌った楽曲を集めたベストアルバム『平成の堀江美都子』をリリース。平成時代に、堀江は音楽や技術の変化をどう考え、どう捉えて歌ってきたのか。その思いについて語ってもらった。今回はインタビューの後編をお届けする。

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――アニメ作品の主題歌の流れも変わってきていると感じますか?

 アニメの主題歌に限らず、音楽にしても歌にしても、昔と今とでは違うと思います。録音のスタイルもそうですが、やはり時代の流れは大きいのかな。昭和の時代は、時間がゆっくり流れていたような気がするんですね。音楽も、譜面のなかに隙間がたくさんあったので、当時は「隙間を歌え」とよく言われていたんです。隙間に感情をのせて、それが人に伝わらなければ、いい歌とは言えないと。でも、今は機械で音をたくさん足せるようになり、メロディーの隙間がだいぶなくなっているなという印象です。音符のひとつひとつに言葉が乗っていて、息継ぎをする隙間もないなと。この時点で、歌の良さというのが変質しているんですよね。思いを込めて歌う隙間がないから、正確に歌うことが今の良さになっている。昔は、多少音程が狂っていても歌手の表現として認められていたんですが、今は正確に歌われる歌がいい歌だと思われるようになっていて。ただ、私はそれでも時間をかけて自分のなかに落とし込んでいけば、必ず隙間は見つかると思っています。以前のように、譜面のすべてに思いを込めることはできないけれど、どこかに自分の存在を置ける、それが今の音楽なのかな。

――変化をしてきていても、ずっと歌い続けている堀江さんから見て、アニメソングの魅力はどんなところにあると思いますか?

 私は、子どもの頃あまり子どもらしい明るさを持った子ではなかったんですね(笑)。でも、歌を歌うとみんなが褒めて、喜んでくれて。だから歌ってきたんですが、アニメソングにはシンプルだけど永遠になくならないようなワードがたくさん入っているなと感じていますし、それが魅力なのかなと思っています。私自身、活動のなかで自分のオリジナルソングを歌いたいと思ったこともあります。だけど、自分がどんな歌を歌いたいのかというところに立ち返ると、やっぱりアニメソングが一番合っているなと。アニメソングは、愛、平和、勇気、希望といったシンプルな言葉をまっすぐに歌える歌なんです。しかも、歌謡曲のようにその時代の流行を取り入れるわけではないから、とても普遍的。何十年経っても懐メロ感がないところが、本当に素晴らしいと思っています。

――堀江さんが担当される曲は、いつ聴いてもまっすぐで元気をもらえる気がします。だからこそ、若い方にも聴いてもらいたいなと。

 古い感じはしないので、きっと新鮮に聴いてもらえるかなと思います。ただ、お母さんより年上のシンガーの曲を聴いているっていうことは、大っぴらにしにくいかもしれないですね(笑)。でも、音楽って自由だから、自分が聴いていいなと思ったり琴線に触れたりした曲を、素直に「いい」とか「好き」という勇気があれば、普遍的に聴けるものだと思います。

――近年はデジタル配信で音楽を聴かれる方も増えていますが、歌う側としてはどう感じていますか?

 とても便利だなと(笑)。ほしい曲が1曲から買えるのがいいですよね。お仕事などで資料として音源が必要になったときにとても助かっています。ただ、私はほとんどイヤホンで聴くことはしていません。

――それはなぜですか?

 音は体全部で受け止めたいからですね。ですから、感動したいなと思ったときには、コンサートに行くようにしているんです。なかなか生で音楽を聴くというのも大変なことですが、できるだけそうしたいし、若い方にもできればそういうチャンスがあればいいなと思っていて。先日も若い方が私の歌を聴いて「喉からCD音源」と言っていたんですね。それは、CDと同じように歌えるからうまい、という褒め言葉だそうなのですが、私からすると「コンサートはCDよりうまいよ!」って言いたくて(笑)。完璧に歌えることがうまいという視点なんだと思うのですが、一発勝負のコンサートは特別なものがありますから、ぜひ足を運んでもらえたらなと思います。

6/5(水) 22:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190605-00010006-choani-musi
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