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2019/05/23

音楽は歌詞あり派?楽器のみ派?

オックスフォード大学・Elena Racevska氏の研究によると、知能の高い人ほど「インストゥルメンタル(器楽)」を好む傾向にあることが明らかとなった。調査の結果、知能の高さと声楽の好みに関連性は見られなかったものの、器楽に関しては明らかな違いが見られたようだ。研究の詳細は、4月に「Evolutionary Behavioral Sciences」上で発表されている。

Intelligence, music preferences, and uses of music from the perspective of evolutionary psychology
https://psycnet.apa.org/record/2018-21493-001

♦知能が高い人が「声楽」を嫌う訳ではない
Racevska氏によると、今回の研究はイギリスの進化心理学者サトシ・カナザワ氏の理論にインスパイアされたという。
カナザワ氏の知能に関する仮説は「知能は新しい未知のものに対処する方法として進化し、その結果、より知的な人の方が新しい刺激を好むようになった」というもの。
当時、性格特性と音楽の好みの関係性について研究していたRacevska氏は、この仮説に影響を受けて「知能と音楽の好み」の研究を始めたそうだ。

調査では、クロアチアの高校生467人を対象に知能テストを行い、その後、音楽の好みに関する質問アンケートに答えてもらった。その結果、知能テストのスコアが高い人ほど、器楽を好む傾向が強いことが判明したのだ。しかも器楽のジャンルは幅広く、アンビエント音楽からチルアウト音楽、エレクトロニカ、ジャズ、クラシック音楽など多岐に渡っていた。

一方で、知能テストのスコアから予測される声楽の好みに差はなく、知的な人ほど歌詞あり音楽を嫌うというわけでは決してない。しかしこの研究だけで「知能の高さ」と「器楽の好み」の関係性を証明するには限界がある。知性は音楽の好みに関わる要素の一部でしかなく、他にも性格特性や性別、年齢、教育環境、家族の収入など多くのことが関係しているからだ。

また質問アンケートでは、器楽への好みに知能とは別の理由が関わっていることも分かっている。例えば、作曲分析に楽しさを見出したり、音楽技法に高い関心を示す生徒(音楽に認知的に関わる生徒)は、知性スコアに関係なく器楽を好む傾向にあったという。今後の研究では、音楽の趣味嗜好が日常生活を通していかに変化するのか、それから音楽が社会的な重圧や人間関係においてどのような影響を与えるのかについて研究を進める予定とのこと。

子どもにジャズやクラシック音楽を聞かせると、賢く育つなんて可能性も十分にありそうだ。

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