今年3月、米大リーグ(MLB)が将来的な導入を見据えた7つの“新ルール”を発表した。主な内容は「守備シフト禁止」「投手のワンポイント起用禁止」「イニング間と投手交代の時間短縮」など。

 MLBと3年間の業務提携を結んだ米独立リーグのアトランティックリーグ(ALPB)で試験導入され、4月25日の開幕戦からすでに実験がスタート。MLBのマンフレッド・コミッショナーは「これらのルールをビッグリーグでの使用前にテストするのが良案だ」と米メディアで発言し、採用も示唆した。

 7案の中で最も物議を醸しているのが、18.44メートルと定められた「マウンドと本塁間の延長」である。

 投手板の位置を従来より60.96センチ後方へ下げるこのプランは、野球の根幹を揺るがしかねない事案のため、ALPBでもシーズン後半(7月)からの導入となった。

■MLBはバッテリー間18.44メートルの延長まで視野

 過去にも投高打低を是正するため、バッテリー間の距離を変更したことがあった。1880年までは13.716メートルだったが、81年には15.24メートルに延び、約10年後の93年には投手の球速アップに伴って現行の18.44メートルに。100年以上の時を経て再び大胆なルール変更に踏み切ったきっかけもまた、投手有利傾向による打率低下だった。MLBは観客動員数の減少が深刻で、本塁打や得点シーンを増やすことでファンの興味を引こうという思惑がある。

 スポーツライターの友成那智氏はこう言う。

「MLBが導入すれば、日本も投手板を下げざるを得ないでしょう。これまで日本が米国の真似をしてきたのは、国際大会のとき選手が混乱してしまうからというのもあります。メジャーに挑戦する日本の選手も増え、大リーグに近づける傾向は今後も続くでしょう」

 MLBでは本塁打が増える一方、三振も増加。昨季のMLBは全打者のヒット数を、全打者の三振数が上回った。

「フライボール革命以降、MLBのビッグボール主義は強くなる一方です。結果として見送りになったが、昨オフには選手会がナ・リーグのDH制導入を提案。MLBと交渉していた。将来的には日本のセ・リーグでの導入もあるかもしれません。また、高年俸の大砲を抱えられる資金力のある球団はホーム球場を狭くして点が多く入る試合展開にしようとするし、人気の低い球団もまた、本塁打量産で面白さをアピールしようと、タイガースやマリナーズなどは“ラッキーゾーン”を造ったのです」(前出の友成氏)

 前者はソフトバンク(ヤフオクドーム)、後者はロッテ(ゾゾマリンスタジアム)が当てはまる。投本間延長で打高投低が進むだけでなく、そもそも捕手までの距離が長くなれば、肩やヒジへの負担は増す。故障者が続出する危険性がある。

 打高投低がエスカレートすれば打者と投手の年俸格差も生じる。それを打破するために、ドーピングに手を染める投手も出てくるかもしれない。

「テストステロン(筋肉増強剤)などなら、インターネットで簡単に手に入る。増強剤とその違反成分が出ないようにする薬がセットで売られています」(前出の友成氏)

 海の向こうの変革は、対岸の火事ではない。

日刊ゲンダイDIGITAL 2019年5月1日 14時5分
https://news.infoseek.co.jp/article/gendainet_539169/