かつて乱闘はプロ野球の華とも呼ばれた。「死球」や「暴言」をきっかけにした両軍入り乱れての取っ組み合いは、一球一打に命を懸けた男たちにとって“負けられない闘い”でもあった。

 ところが最近、ケガ人や退場者を出すような乱闘がほとんど見られない。なぜ減ったのか。野村克也氏に「南海の三悪人」と呼ばれた江本孟紀氏は、「チームの垣根を越えた友達付き合いが原因」と分析する。

「昔のプロ野球は、“ゲーム”ではなく“ケンカ”でした。最近のように、試合前の練習で相手チームの選手に挨拶に行くような光景は皆無。今の選手はとにかく楽しく野球をやりたいから、乱闘が起きる雰囲気じゃありません。そのうえ、ハワイやグアムで他球団の選手と一緒に自主トレをする。選手同士が仲良くなりすぎています」(江本氏)

 WBCや五輪のために“侍ジャパン”が招集され、各球団のエースや4番が行動を共にする。今年も「侍ジャパンシリーズ2018」として開幕前にオーストラリア戦が2試合組まれた。DeNAの筒香嘉智やソフトバンクの千賀滉大など各球団の代表28人が顔を揃えたが、「これから敵味方に分かれて戦おうという時期に、日本代表の試合を組むのはいかがなものか」(セ球団関係者)という疑問の声も上がった。

 これまで乱闘の“主役”になりがちだった外国人選手にも変化が見られる。

「昔の外国人は“やられたらやり返す”という米国のスタイルを持ち込んでいるうえに、日本の野球を見下していたので、すぐに手を出す荒っぽい選手が多かった。最近は成績より性格面を重視し、先に手を出せば解雇や罰金という項目を契約書に入れている球団もあるようです」(スポーツ紙デスク)

 ルールの変更も影響している。選手のケガ防止を目的に2016年に導入された「コリジョンルール」によって危険なクロスプレーが激減した。

 また、「頭部への危険球」が一発退場となり、「ビデオ判定」の導入でクロスプレーのミスジャッジがなくなった。協議後に判定が覆ることに釈然としない選手は多いものの、その頃にはすでにクールダウンしているため乱闘に発展しない。

 暴力は許されるものではないが、そうしたルール変更によっても“プロ野球の華”は摘まれてしまったのだ。

4/3(火) 7:00配信
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