「初動負荷トレーニング」は、野球界の不老不死の薬なのか?

 日米の野球ファンが気をもんだイチローの去就が固まった。古巣・マリナーズと契約を結んだ際に、イチローはメディアに「50歳までプレーしたいのではなく、最低でも50歳まで」と強調した。最終目標ではなく通過点だと考えているということだ。

 1973年10月22日生まれの44歳。

 日本流では同学年(5月生まれ)のバートロ・コローン(レンジャーズ)が5カ月年長だが、少なくとも今季も「メジャー最年長野手」なのは間違いない。

 日本球界に目を移そう。

 今季の最年長は中日の岩瀬仁紀。イチローより1学年下の1974年11月10日生まれの43歳で、今季からは投手コーチ兼任となった。さて、この2人には愛知県出身、名球会員という点以外にも共通項がある。

 それは取り組むトレーニングが同じであるという点だ。

中日は一軍も二軍も専用マシンを完備している。

 師事するのは小山裕史(やすし)氏。鳥取市のトレーニング研究施設「ワールドウィング」といえば、ピンとくる人もいるかもしれない。

 小山氏が提唱する「初動負荷理論」に基づいたトレーニングを実践している。米国在住のイチローはさすがに鳥取市を訪れることはなくなったが、シアトルやアリゾナの自宅には同施設と同じ特殊なトレーニングマシン一式をそろえている。

 岩瀬が所属する中日も一軍本拠地のナゴヤドームはもちろん、二軍が戦うナゴヤ球場のトレーニングルームにも専用マシンを完備。その上で、岩瀬はシーズンオフには何度も鳥取市まで足を運び、トレーニングを継続している。

 日米の「最年長選手」が同じトレーニングをしているのは偶然なのか。  

「他のところとは違う。何かがある」

 岩瀬は即答した。

「関係あると僕は思っています。いや、なんでそのことに誰も気づいてくれないのかなって(笑)。

 他のところとは違う。何かがある。自分にないものが得られるんですよ。発見。新たな引き出し。僕は学ばせてもらっている。それを他の人は気づくかどうか。そこだと思っています」

 岩瀬がワールドウィングを初めて訪れたのはドラフトで指名された直後の1998年冬。担当の近藤真市スカウト(現投手コーチ)の薦めに従った。

 以来20年。単なる筋力トレーニングなら、鳥取市に通うまでもない。

 名古屋〜鳥取は直行便がなく、新幹線と在来線を乗り継ぐか、ひたすら車を走らせるか。シーズンオフは降雪や凍結の可能性もあり、アクセスは悪い。それでも岩瀬が鳥取通いをやめないのは「発見」と「引き出し」に満ちているからだ。

初動負荷理論は、どういうトレーニング?

 そもそも、アスリートがトレーニングにいそしむ目的はパフォーマンスの向上にある。パワーをつけたければ筋肉の量を増やす。つまり重い負荷をかけ、筋肉の肥大化に努めるわけだが、そんな考え方を革新的に変えたのが小山氏と言われる。

 読んで字のごとく「初動」に「負荷」を、それも軽めにかける。いわゆる「ベンチプレス100キロ」「スクワット250キロ」という世界ではない。

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Number Web - ナンバー 03/29 11:45
http://number.bunshun.jp/articles/-/830322