【平昌=時吉達也】開幕まで残り1週間となった平昌五輪。現地では着々と準備が進む一方、労働環境の劣悪さなどを理由に、ボランティアスタッフの間で離脱者が続出している。目標枚数の達成を優先したチケット販売手法をめぐる問題点も浮上。大会規模は過去最大となり、北朝鮮の参加で国際社会の注目度も高い五輪の“影”が浮き彫りになりつつある。

 氷点下20度にも達する極寒の中、開会式やスキー競技が行われる平昌会場では、午後10時半まで、大学生ボランティアが20分交代で車両案内を続ける。大学2年の女子学生(21)は警備灯を手に「寒いけれど、五輪の熱気は日増しに強くなっていると感じている」と笑顔を見せた。

 開幕後も関連施設の工事が続いた前回のソチと異なり、競技場や付属施設の建設はすでに完了。インターネット環境も充実し、ハード面では順調に準備が進む。大会運営のカギとなるのは約1万8千人のボランティアスタッフだ。

 1日には、通訳ボランティアを行う日本全国の外語大の学生ら約100人が韓国入り。神田外語大2年の三木康裕さん(20)は「世界中の人と交流を楽しみたい」と声を弾ませた。

 しかし、現地の参加者からは厳しい寒さに加え、「100人の宿舎に洗濯機が3台しかない」「居室の温水シャワーが出ない」などと不満が続出。平昌五輪組織委によると、昨年11月時点では約1万8千人登録されていたボランティアは、1月31日までに2194人が離脱した。広報を担当するボランティアの男性は宿舎の遠さを指摘する報道記事を横目に、「自分は3時間以上かかる」とぼやいた。

 組織委は相次ぐ指摘を受けて同日、待遇改善策を発表。取材に対し「人的余裕は十分にあり、大会運営に支障はない」と強調する。

 一方、観戦チケット販売状況にも疑問の声が上がっている。昨年11月の段階で達成率が30%程度にとどまっていた目標販売数(全販売数の80%)は、1月29日現在で74・1%にまで上昇。一見順調にみえるが、実際には政府の呼びかけを受けた自治体や大企業の大量購入が数字を押し上げている。ソウル市では30億ウォン(約3億円)を超える予算を組み、チケット4万2千枚を購入。低所得者層などに無料配布するという。

 中央日報は「タダ券を持っていても、交通、宿泊費用の問題から観客が来場しないおそれがある」と指摘。組織委はボランティアや職員を動員して空席を埋める計画も検討している。


2018.2.1 20:28
http://www.sankei.com/pyeongchang2018/news/180201/pye1802010014-n1.html