ホンダとマクラーレンとの関係が、風雲急を告げようとしている。

 モンツァを訪れていたホンダの山本雅史モータースポーツ部長は「いろんな方々とさまざまなミーティングをしています。あとはパズルをどうはめるか。いろんなピースがあるので、それをうまくはめていかなければなりません」と決断が間近に迫っていることを示唆した。
その決断とは、ホンダがマクラーレンとの関係を解消することだと言われている。

 マクラーレンがホンダとの関係を解消したいと考えているのは、もはや周知の事実である。その背景には現在マクラーレンのエースドライバーで、元王者のフェルナンド・アロンソの意向がある。

 8月下旬に行われたベルギーGPでは、アロンソはこういう表現でホンダを批判した。
「ホンダではないエンジンを搭載していれば、ベルギーGPの予選でマクラーレンは1-2だっただろう」

 今年でマクラーレンとの契約が切れるアロンソは、残留の条件として、ホンダ以外のパワーユニットを希望している。もちろん、ホンダのこの3年間のパフォーマンスを考えれば、アロンソがホンダを信用できないのは当然ともいえる。

 だが、ホンダはマクラーレンと長期にわたる契約を保持しており、マクラーレンが契約を破棄することになれば、違約金が発生する。さらにホンダ以外のPUマニュファラクチャーはすでに3チームにPUを供給していることから、4チーム目となるマクラーレンへの供給には消極的だった。交渉は行き詰まるかに思えた。

 そこに浮上してきたのが、トロ・ロッソだ。レッドブルの兄弟チームであるトロ・ロッソは、将来的にはレッドブルから独立する道を模索し始めている。現時点では性能面でルノーより下回っていると言われるホンダのPUだが、世界的な自動車メーカーとの提携は、トロ・ロッソにとって性能不足を埋めるに十分なメリットがある。

 ホンダとトロ・ロッソの提携が実現すれば、現在トロ・ロッソが使用しているルノーPUをマクラーレンが手にする。トロ・ロッソ・ホンダの誕生は、ホンダとトロ・ロッソだけでなく、マクラーレンにもメリットがある三方一両得な解決案だった。

 ホンダとトロ・ロッソの交渉は、夏休み中に破談したと言われているが、モンツァで再開されたという。

「チームにはチームの考え方があり、ホンダにはホンダのやり方がある。それをどうやって理解しあって、お互いがハッピーになれるか。契約を盾に自分たちの主張だけをゴリ推ししても、ウィンウィンの関係にはなれない」(山本部長)

 だが、ホンダがマクラーレンとの契約を解消し、トロ・ロッソへ供給するには、クリアしなければならないさまざまな障壁がある。それが山本部長が言う「パズル」であり、「どうはめるか」というのが現在の状況だと推測される。そして、その答えは早ければ、今週中にも明らかになる。

 どのような結論が出されたとしても、現時点でホンダがF1から撤退することはない。

「2013年にF1に復帰することをホンダが決定したとき、われわれは今度は継続していくという強い信念を持って入ってきました。この3年間戦ってきて、正直『ホンダは厳しいね』というチームもあれば、『ホンダとやっていきたい』というチームもあります。みんなから『いらない』と言われているわけではありません」と山本部長は撤退を否定した後、こう続けた。

「今日(9月3日)、ジャン・トッド(FIA会長)と会いましたが、『われわれはホンダを応援する』と言われました。昨日もチェイス・キャリー(F1会長兼CEO)とロス・ブラウン(F1モータースポーツ担当マネージング・ディレクター)がホンダのモーターホームに来てくれて、『ホンダはF1の世界にいてほしいし、いるべきだから、われわれにできることがあれば、なんでも言ってくれ』という言葉をかけていただきました」

 ホンダを必要としている人たちがいる。その人たちのため、新たな一歩を踏み出す時が来ている。

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