国際オリンピック委員会(IOC)が11日の臨時総会で、2024年と28年の夏季五輪開催都市を9月のIOC総会(リマ)で同時に決定する異例の案を全会一致で承認した。
24年五輪招致に立候補しているパリとロサンゼルスの調整を経て両大会に振り分けられる見通しだが、巨額の財政負担への不安などから撤退が相次ぐなど、近年の五輪離れに対するIOCの強い危機感がにじんだ形だ。

 IOCは五輪開催能力の高いパリとロサンゼルスを手中に収め、両都市は狙い通り開催権を勝ち取る見通しとなった。臨時総会の冒頭、バッハ会長は「ウィン、ウィン、ウィンだ」と同時決定の意義を強調した。

 だが、五輪離れに危機感を募らせ、既存施設の活用奨励など開催都市の負担軽減策を打ち出すIOCも、結局はその国の「財政力」や「安定感」になびくことがはっきりした。委員からはテロや経済危機など、28年大会の早期決定によるリスクを懸念する声も出た。めまぐるしく変化する国際情勢下で、五輪開催可能な都市の選択肢はむしろ狭まった感さえある。

 24、28年大会を振り分けることで、両都市はいわば“無投票当選”を果たした。招致レースは金銭的にも政治的にもエネルギーを使う一方で、世界に向けて五輪の価値や未来像を語る場ともなり得る。IOCは五輪の存続に重きを置くあまり、五輪精神の発展継承という本分がおろそかになった印象もある。

 「スポーツの力」を訴え、マドリード、イスタンブールとの20年大会招致レースを制したのが、同じく財政力や安定感に定評のある東京だった。招致段階と計画は大きく様変わりしたが、東京五輪の成否はパリやロスを見つめる目に直結する。32年大会を決める段階までに五輪離れを食い止められてこそ、IOCも勝者といえる。(森本利優)
                  


 ◆五輪2大会同時決定 IOCによると、夏季五輪2大会の開催都市同時決定となれば、1921年のIOC総会で24年パリ、28年アムステルダム大会を一括で決めて以来となる。
4都市が立候補した24年大会はロサンゼルスとローマを協議の上で除外し、パリを選出。アムステルダムに28年大会の開催を提案し、いずれも投票で承認した。1896年アテネ、1900年パリ大会も同時に決まった。(共同)
http://www.sankei.com/smp/sports/news/170712/spo1707120020-s1.html