東京の民放テレビ・キー5局は6月、広告主の団体である日本アドバタイザーズ協会に対して、テレビ広告取引の指標見直しの申し入れを行った。

 広告取引では、ビデオリサーチ(VR)社が測定する視聴率が指標となっている。この視聴率とは、ある番組を何パーセントの家庭がリアルタイムで視聴していたのかを計測したデータだ。今回の申し入れは、録画再生も加え、さらに世帯ではなく個人を基準にしようというもので、テレビが始まってから何十年と続いてきた商習慣を初めて見直す大変化だ。

 これまではリアルタイムでの視聴しか計測してこなかったので、毎分主義による番組制作が主流となってきた。また、人口動態の変化に伴い中高年狙いの番組が増え、若者のテレビ離れが起こっていた。新指標導入で、状況は変わるだろうか。どんな影響があるのかを考えてみたい。

■視聴率の新仕様

 VR社は1962年に視聴率調査を開始した。しばらくは世帯単位のデータだけだったが、90年代後半に個人視聴率も測れるようになった。ただし個人はあくまで目安で、リアルタイムによる世帯視聴率が広告取引での指標になり続けてきた。

 同社は昨年10月、視聴率測定で新仕様を導入した。サンプル世帯を600から900に増やし、放送後7日間のタイムシフト視聴を測り始めたのである。それまでは放送の瞬間という“点”だけが対象だったが、放送後1週間という“面”で番組の力を測れるようになったのである。

 また、サンプル数を増やしたことで測定誤差が減った。たとえば従来の視聴率10%は、統計論的には7.6〜12.4%の範囲というのが正確な言い方だ。ところがサンプルが900に増えたことで、10%の番組は8〜12%の範囲と確度が上がっている。加えて個人サンプルも増えたため、個人視聴率の精度も向上した。さらにリアルタイム視聴にタイムシフト視聴が加わった分で、夜帯で15%ほど多くの人がテレビを見ていることもわかった。テレビの影響力が従来以上に大きいことが判明したのである。加えて、ジャンル毎に番組の見られ方が異なることもわかってきた。

つづく

7月4日 ビジネスジャーナル
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