男だけどメイドカフェでバイトしてた時の話 [無断転載禁止]©2ch.net
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四月の夜、僕は路上で歌っていた。
もう昼夜問わず暖かくなっている頃だったので、ずいぶんやりやすくなっていた。
高架下で、誰も知らない歌を歌って、知らない酔っ払いが少し聴いて、すぐに去っていく。そのルーティンは心地良かった。たまに声をかけてくれたり、お金をくれるひともいた。 >>1 の母親です。このたびはうちの馬鹿息子がこのような糞スレを立てて
皆さんに大変な迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。
母親として、非常に恥ずかしいとともに、何故こんな馬鹿息子を産んでしまったのだろう
という後悔の気持ちで一杯です。
元々頭の弱い子で、学校ではいつも苛められて、いつの頃からか精神的にも異変が出てきたので
何とかしなければいけないと心配していたのですが、まさかこんなことになって
しまうとは.....
母親として何とお詫びすればよろしいのやら...
でも、来週から精神病院に入院することが決まりました。
多分、一生退院できないと思います。
馬鹿息子である>>1 を一生世の中に出さないことが、
母親の私にできる、皆様への精一杯のお詫びだと考えています。
このたびは本当に申し訳ありませんでした。 その日も延々と歌っていた。
しかし気がつくと、誰も高架下を通らない時刻になっていた。
誰も聴いていない時間も嫌いではなかったのだが、その日は早めに終わることにした。
そう思った矢先だった。男がひとり高架下に入ってきた。 業界人のようなメガネに逆立った髪は、なんとなく僕のイメージする「テレビのプロデューサーっぽさ」があった。男は僕に和やかに話しかけてきた。
「兄ちゃん、いつもここでやってんな。いい感じなん?」
「えぇ、まぁ、いいですね」
何がいいのか分からないまま、僕は答えていた。 「なぁ、わし、そこでメイドカフェやってんねんけど、昼間来て歌わへんか?給料も出すで」
「メイドカフェですか。聞いたことはありますけど……でも、そもそも僕いります?」
「生演奏があるカフェにしたいねん。興味無いか?」
「いえ、そんなことないです。全然やります」
興味があるというのは嘘だったが、僕はふたつ返事でOKした。 プライドやこだわりなんかは完全に無くしていたので、給料が貰えればなんでも良かったというのが本音だった。
「今ひまか?店がどんなんか見に行こうや。こんな時間やったら店、誰もおらんから」
僕は男の後に着いていくことにした。歓楽街の方面に僕たちは歩いていった。 歓楽街は相変わらず、ネオンがビカビカと光って、ひとが多かった。道のスミで倒れているひとや、手相占い師に客引き。
ネオンさえ無くなれば、このひとたちも昼起きて、夜寝る生活になるのだろうか。世の中に居場所が無いひとたちが、時差の中で身を寄せ合っているみたいだった。
そんなことを考えながら、歩いていたらすぐに店に着いた。 その店は喫茶店の地下に無理やり作ったような狭い施設だった。
コンビニのような電灯の明るさとファンシーなつくりの店内に、誰もいないのは少し気味が悪かった。
テーブルがいくつか並んでいて、猫耳をつけたキャラクターのイラストがあちらこちらに描かれていた。 「昼間はここでメイドさんがワイワイやってるんすね」
「そうそう、みんなアイドル志望の娘ばっかりやから、そっちの手伝いもしながらここで働いてもろてんねん」
男はそれらを統括するオーナーのようだった。「アイドルについて」をやたらと楽しそうに喋った。
このとき僕はなんとも思わなかったが、もしあのとき、あの肌の表面の油のような、ほんのわずかな粘着性を感じ取れたら、何かが違ったのかもしれない。 >>19
ありがとう。ひとりでも起きてたら書こ。
僕は次の日から働くことになった。
朝から胡散臭いぐらいの快晴だった。 カフェに行くと、メイドさんが看板を一生懸命拭いていた。
太陽光がバケツの水に反射して、宝石みたいだった。
「おはようございます」
「あ、今日から歌うひとやろ!? よろしくね!」
陰気な僕と対照的に、「ユキナ」という名札をつけた彼女は、キラキラした笑顔で看板を磨いていた。
電灯もついていない看板は、これでもかというぐらいピカピカだった。 「凄いピカピカですね」
「せやろ?触ってみる?音すんで!」
言われるがままに手のひらで触ってみると、キュッキュッと洗い立ての皿のような音がした。驚いた。
「これは凄い」
「看板がムチャクチャ綺麗なほうがええやろ! 掃除ってメイドっぽいし!」
「たしかに、こんな綺麗な看板見たことないかもしれません」
本心からそう思った。 オーナーに少し説明を受けて仕事が始まった。
普通のバイトと比べると、自由な仕事だった。
お客さんとメイドさんのジャンケンの歌を歌ったり、みんなが知っている歌を歌ったり、伴奏をする係だった。
お客さんを楽しませるのはメイドさんの役目だから、僕はそれをサポートすればいい。
しかし、メイドカフェというものを初めて肌で知ったが、カルチャーショックの連続だった。 オプションというやつがあって、メイドさんとジャンケンをするのに千円、同席して会話をすると二千円かかるのだ。
ツイスターとかいう身体が触れ合うゲームをするのに至っては、五千円もかかる。
(狂ってんな……)と自分の心のなかから声がしたが、すぐに聞こえないフリをした。こういう世界もある、と思い込むようにした。 僕はその日、二時間ほど働いて五千円を貰った。当時、本当にお金が無かったので、ものすごくありがたい収入だった。
ただ、「この女の子たちとツイスター一回分か」と思うと、価値があるのか無いのかわからなくなった。 しばらくすると、僕もメイドカフェのバイトに慣れてきた。
歌う以外の看板磨きや掃除なんかも手伝うようになった。
余談だけど、僕はバイトが全然できない19歳だった。コンビニもすぐバックれて辞めたし、マクドも駄目だった。みんなができる仕事が僕には難しすぎた。
そんな僕にとって、初めて通用した「まともなバイト」だった。正直、楽しかった。
お客さんたちはいわゆる「アキバ系」のひとたちだったが、意外にも明るくて気さくな連中で、すぐに仲良くなった。オタクは暗くて閉鎖的だと思っていたのは、僕の偏見だった。 メイドさんたちは僕が「食うのに困っている」と言ったら、いろいろなものを作ってくれたし、とても優しくしてくれた(オムライスにハートや相合い傘を描かれるのはカンベンしてほしかったが)。
あの店にいるひとたちは、毛色の違う僕を受け入れてくれた。
アルコールが無くてもハイになれる彼らはとても健全な人間に見えた。
それに、居心地のいい空間だった。 僕のバイト初日、看板を磨いていた「ユキナさん」は指名ランクNo.1のメイドさんだった。
年がふたつ上の彼女は、僕のことを弟のようにかわいがってくれた。僕も遠慮なくユキナさんには、甘えていた。
小遣いをくれるときもあったし、家に食事を作りに来てくれることもあった。僕も調子に乗って、なんだかんだ、いろんなものを買って貰っていた。 オーナーも言っていたが、メイドさんたちは、それぞれが歌手やアイドルのような活動をしていた。その合間にアルバイトとして、メイドカフェに勤めている。
メイドカフェはバイト先でもあると同時に、芸能事務所やプロダクションのような機能を持っていた。そしてユキナさんも、そこで歌手を目指す女の子のひとりだった。 僕がいつも通り演奏の仕事を終えて、バックヤードで帰り支度をしているときだった。バタンとドアを開けて、ユキナさんが入ってきた。
「あ、ユキナさん。お疲れ様です」
「あれ?もうおかえり?」
「えぇ、もう今日はお客さんもおらんし」
「ちょっとひまなったもんなぁ。大丈夫?ちゃんと食べてる?」
「食べてますし、なんか最近体重増えた気します」
本当に増えた気がしていたのだ。
彼女は楽しそうに「増えた気って何よ!計ってないん?」と言った。
「俺、体重計持ってないですもん」 僕はユキナさんと話している時間が好きだった。
美人なのに、気取っていなくて明るくて、開放的なひとだった。
それでいて自然と相手を気遣える彼女が、お客さんの人気者なのは頷けた。指名ランクはずっとNo.1だった。だけど店の中でも彼女へのやっかみも無く、まさしく誰からも慕われているようなひとだった。 少し間を置いてから、ユキナさんが口を開いた。
「なぁ、前から聞きたかってんけど音楽やってるのつらくないん?」
聞かれて、僕は少し考えた。そんなこと考えたことも無かったからだ。 「いや……僕は好きなことなんで、あんまし」
「そっかぁ。やっぱ凄いなぁ!」
やけに明るい声色だった。
「でもいつも『楽しい楽しい!』みたいな感じでもないです。つらくはないけど、習慣というか、なんか改めて考えたことなかったです。ムズイっすね」
「ごめんな、変なこと言うて。お疲れ様!」
「いえ、お疲れ様でした。なんか分からんけど、元気出して下さい」
「大丈夫。ありがとう」
ユキナさんはそう言って、いつも通りの笑顔で、手を振っていた。 次の日、ユキナさんは店を辞めていた。
オーナーに聞いたら、彼女はアイドルになることを諦めたそうだった。 話を聞いた僕は「あ、そうすか」となぜか平常心を装った。メイドさんたちがユキナさんの話をしていても、気にしていないポーズをとっていた。正体の分からない、とにかく誰にも知られたくない感情で、胸がいっぱいになっていた。
連絡先も知らなかったし、誰かに聞くこともできなかった。どうしようもない気持ちだった。 そしてユキナさんが辞めた後、すぐに店が摘発された。
オーナーが売春の斡旋容疑で起訴されたことが原因だった。
あの店は裏でメイドさんたちの売春の温床になっていた。僕はそのことをオーナーの逮捕で知った。
あの頃、大阪にはそういった形態の店が別の街にもいくつもあったらしい。梅田、十三、日本橋、なんば、京橋。
あらゆる地区のそれらは一斉に摘発された。 彼女たちの所属事務所のように、違法風俗とプロダクションが提携しているケースはビジネスにしやすいそうだ。
だけど、そんなことは僕にはどうでも良かった。
僕のことかわいがってくれていたユキナさんたちは、知らない男たちに買われていて、それを知らないまま僕はあの店で働いていた。
ただ、それだけだった。 僕は彼女たちを買っていた男たちを殺してやりたいと思った。
だけど僕にはそんな権利も無いし、何よりも筋違いの怒りに思えた。
たぶん、僕は自分が何も知らなかったことが、情けなくて嫌だったのかもしれない。 僕はあの店のことを一刻も早く忘れようとした。もう、何も思い出したくなかった。
だけど、あのバックヤードのユキナさんの「つらくないん?」という声が耳鳴りみたいに蘇る夜がある。
人間をそれなりに長くやってると、頭のなかに刻みこまれてしまった声がある。僕だけじゃなく、誰しもにあるものだ。
そして、それは消したくても、たぶん一生消えないのだと思う。 先日、久しぶりに店があった場所へ足を向けてみた。跡地は廃墟化していて、まだ残っている。借り手もつかないらしい。
看板がひどく汚れて、無残に割れていた。触ると手のひらが真っ黒になった。
もう、なんの音もしなかった。 おしまいです。
起きてくれていた人、最後まで読んでくれてありがとうございました。 良かったら、この後に会った人とかのこともまた書いていきます。 ネオン〜ってとこと刻み込まれてる声ってとこ好きだな
文章は荒いけどよかった なんて言うか、表現が詩的ででもさりげなくてうまいね 続き楽しみにしてる どこ?
客だったからきになる
あ、、
創作だから言えないか。。
まぁ、面白かったよ >>70
返事ありがと
1000どころか次のスレ立ったっていうのは妖怪退治とか人気のあるやつかな?
そういうのはありそう
そういうのは除外したココみたいなやつで無意味に晒し保守?して1000までとかあるんかな? 普段は創作感漂うスレはすぐ閉じるんだが、最後まで読めた
創作スレって無駄な設定とか会話とか文章の装飾が多すぎるんだが、
これはギリギリセーフな範囲に治まってたし、
キモオタの願望みたいなのもなくて、まあ良かった 斡旋してる店は基本的にリフレ店として出してるからメイドカフェみたいにはなってないよ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています