
広島県廿日市市宮島口のもみじまんじゅう店「おきな堂」が5月末、創業60年の歴史に幕を下ろす。「クリーム入り」を業界で初めて発売。職人が焼くふわふわの生地にはファンも多い。
宮島の観光客が過去最多を更新する中での決断。その理由は―。
【画像】生菓子に近い「おきな堂」のもみじまんじゅう
創業は1965年12月。社長の木谷憲昭さん(77)の亡き父善三郎さんが開業した。翌春には高校を卒業したばかりの憲昭さんも加わった。
当時は洋菓子ブーム真っただ中。憲昭さんは知人が営むケーキ店に通って生地作りを学んだ。目指したのは、スポンジのような軟らかな食感のもみじまんじゅう。84年には
クリーム入りを他店に先駆けて売り出すなどして人気を集めてきた。
近年は宮島の観光客が急増しており、24年には過去最多を更新。インバウンド(訪日客)も目立つ。宮島への玄関口にあるおきな堂にも多くの客が訪れている。
そんなさなかの閉店。「猛暑で品質の維持が難しくなった」と憲昭さんは語る。生地もあんも手作りで、水分を含んだ生地のため多くは消費期限が3日間と他社よりも短い。
昨夏は初めて「涼しい場所で保管をお願いします」と書いた日本語と英語のシールを貼り、店頭でも早く食べるよう説明する。
しかし、電車の時間を気にして急ぐ客や外国人客も多く、憲昭さんは「説明が行き届かない可能性もある」と不安を募らせる。「ここまで食中毒を出すことなくやってきたのに、何かあってからでは遅い」
さらに物価高や人手不足も切実だ。もみじまんじゅうは1個140円と10年前より30〜50円高い。これ以上の値上げは「安くて手軽」なイメージが損なわれるため難しいと判断したという。
憲昭さんは「最後まで全力を尽くしておいしいまんじゅうを届けたい」と話している。
https://news.yahoo.co.jp/articles/648a0ffd58826539dcca9fde1e488e48c66b0c57