【シリコンバレー=清水孝輔】米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は
19日、開催中の開発者会議「GTC」に合わせて開いた記者会見で「日本は自ら人工知能(AI)を構築すべきだ」と述べた。
日本はAIを積極活用することで生産性を高められると訴えた。

ファン氏が19日、米カリフォルニア州サンノゼで開いた記者会見で日本に関する質問に答えた。
日本語の学習データは特殊だと指摘し、「日本語データでAIを開発し、日本に再び輸入するのを
(外国企業などの)第三者に任せる理由はない」と話した。ファン氏は「AIは国家の生産性を高める
ベストな方法だ」と指摘した。

ファン氏は米中対立が製造業にもたらすリスクにも言及した。「半導体の部品は世界中から集まっている。
その多くは中国からだ。供給網のレジリエンス(回復力)を高めるのが重要だ」と述べた。
半導体の生産を委託する台湾積体電路製造(TSMC)との関係を重視する考えを示した。

米政府は先端AI半導体の輸出規制を強めている。エヌビディアは性能を落とした製品で規制を回避してきたが、
足元では中国向けの出荷が急減している。ファン氏は規制への対応について「中国市場に最適化するために
ベストを尽くしている」と述べるにとどめた。

「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIは2月、高精細な動画を生成するAI「Sora(ソラ)」を公開した。
ファン氏はソラが作り出す動画が現実社会の物体の動きを反映していると指摘し、「AIは物理法則を理解している」と話した。

一部の研究者は幅広い作業をこなす万能なAI「汎用人工知能(AGI)」の実現を予想する。
ファン氏はAGIについて「明確に定義する必要がある。仮に医療や法律など幅広い試験にほとんどの人間よりも
優れた回答を出すと定義すると、恐らく5年以内に達成する」という考えを示した。

エヌビディアは18〜21日の日程で開発者会議を開いている。18日には2024年中に投入する最先端のAI半導体を発表した。
会議にはAI開発企業や著名な研究者が参加し、米グーグルや米アップルの開発者会議と同様に注目を集めるようになっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19E960Z10C24A3000000/