たばこの受動喫煙から社員の健康を守ろうと、秋田県湯沢市の総合建設業「和賀組」は社員に「禁煙手当」を支給している。人手不足に直面する建設業界で、喫煙者が珍しくなかったかつてのイメージを変え、より魅力的な職場としてアピールする狙いもある。2018年に導入後、支給対象者は現在、全社員の約半数に達しており、同社は「さらに増やしたい」と意気込む。

【写真】鏡張り?各地で増えるさまざまなタイプの喫煙所

 「室内全面禁煙」。社内の通用口には、こう書かれた紙が張られている。社内での健康管理の取り組みを評価する「健康経営優良法人」の認定証も置かれていた。

 同社の近藤真紀子総務課長によると、禁煙手当は、喫煙しない社員全員に月額3000円を支給する。休憩時間も含めて勤務中にたばこ(電子たばこを含む)を吸わない▽申請後に喫煙行為があった場合、それまでに支給を受けた全額を翌月給与から天引き返済することを承諾する――ことが条件だ。申請書の提出が必要で、これまでに全社員約80人のうち約半数が提出した。禁煙区域は社内にとどまらず、工事現場に一時的に建てるプレハブも該当するという。

 和賀幸雄社長によると、かつては現場の作業員がくわえたばこで働く光景も珍しくなかったが、東京の知人の会社が非喫煙者に手当を支給していると知り、参考にしたという。近年、人口減少が加速して業界では若手を中心に人材確保がより切実な課題になっている。新卒者や女性が働きやすい職場づくりに加え、これまで在籍してきた社員に健康で長く働いてもらうことがますます重要になっている事情もある。

 同社は禁煙手当の導入のほか、社員の健康状態の把握に努め、健康診断で要再検査となった社員の2次検診の受診を徹底するなど健康経営を推進。近年、「健康経営優良法人」に認定され続けている。禁煙手当の導入から5年余りで新卒若手社員の多くは非喫煙習慣が定着し、たばこ代の出費も減って家族も喜ぶなど、前向きな効果が出ているという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/419ebd4894102c30df19ddbecef4f37d851ddb2b