崩れた実家には両親が…でも逃げるしかなかった 猛火が襲った輪島
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大火に襲われた石川県輪島市河井町。2日、会社員の清水宏紀さん(46)は実家の焼け跡をじっと見つめていた。

 地震が起きた当日、宏紀さんは県南部の能美市から両親の暮らす実家に帰省した。

 「ただいま」

 「お帰り」

 いつも通りのあいさつ。だが、実家に戻ってわずか3時間ほどで大きな揺れに襲われた。宏紀さんは津波が来ると思い、実家近くにある駐車場に車を取りに向かった。そこに2度目の大きな揺れが襲った。

大きな音がして実家の方向を見ると、3階建てだったはずの実家は1階部分が崩れていた。そこには両親がいたはずだった。

 声をかけ続けると、一瞬母の声が聞こえたようだった。だが、余震は断続的に続き、津波から逃げるよう呼びかける防災無線も鳴り響いていた。どうすることもできず、近くのビジネスホテルに逃げるしかなかった。

 ホテルの上層階からは実家が見えた。最初は遠くにあった火の手がみるみるうちに実家に迫ってくるのがわかった。

 居ても立ってもいられず、近くにいた消防関係者に救助を頼んだが、申し訳なさそうに言われた。「延焼を食い止めるのに精いっぱいだ」

 猛火が実家をのみ込んでいった。目の前で起きている現実から目を背けることしかできなかった。

 夜が明け、両親がいたであろう場所に立った。のんびりと過ごしたひとときから、一日もたっていなかった。両親の安否はわかっていない。